BRAND NEW DESIRE




「あんたともあろうお方が、クスリを使うなんてな…。」

 クリフは動かなくなった体を、ベッドの上で必死に動かそうとする。
しかし、即効性のクスリが既に体に回りきって、動きはしない。

「キミを力で押し倒そうとしても、かなわないだろうからね。」

 そんなクリフを後ろで腕を組みながら見下ろす人物。ヴィスコム提督。
今、クリフは彼の指揮する船の中に居る。それは、彼の手中にあったと
同じようなもの。

「あんたのことは、信頼のおける人物だとは思っていたんだがな…。」

「フフフ。私もキミのことは高く評価していたつもりだ。」

「ヘッ。そりゃどうも。」

 冷酷な笑いを浮べるヴィスコムに対して、どうにもならない状況のなかで
余裕を演じて微笑を浮べるクリフ。

「以前から私はキミに興味があってね。」

 上品な靴音を立てながら、ヴィスコムはクリフが横たわるベッドへと歩
み寄る。それから、彼はそっとクリフの頬に指を滑らす。

「何をする気だ!?」

 何をされるのかは、うっすらとは気づいていた。
そして、余裕の無くなったクリフに顔を近づけて、ヴィスコムは冷酷にも
表情を変えずに落ち着いた口調で言う。

「言ったはずだ。私はキミに興味があるとな。…ここは、私の船だ。もし
キミが私を拒めばキミのお仲間をこの船から降ろすことも、私の声一つで
可能なのだよ…」

「くっ……。」




☆ ★ ★ ★ ☆



「どうした…、犯るんならヤれよ。」

 クリフが後に自分の身に起こる、出来事に対して覚悟を決めていたころ、
ヴィスコムはクリフのその覚悟を裏切るように、クリフの頬から手を離し
クリフの傍を離れていく。

「フッ。…今すぐという気持ちもあるが、キミは長年私たちが追い求めてきた敵だ。
それが、今、私の目の前でそうやって何も出来ないザマを眺めるのも、一興かと
思ってね。」

 クリフに背を向けたヴィスコムがそう言って、近くにある椅子へと彼は
腰を掛ける。それから、彼は腕をくみ表情を変えずに、ベッドのクリフ
を名のある芸工が作った芸術品を眺めるような目で見やる。

「いいのかぁ?そうやって余裕を見せてっと、結局は逃げられちまうんだぜ?」

「キミのほうこそ、余裕を見せるのはやめたらどうだね。自分の状況
がわかっているはずだとは思うが。」

「ほう。オレがどんな状況だって?」

「フフフ。やはり私が興味を持つほどの対象ではある。
…が、キミは逃げられはしない。」

 おぞましい未来を宣言するヴィスコムの落ち着いた声が、
冷たい無機質な壁に反射する。

「わからねえぜ?あんたも血の臭いがする世界で生きてきた人間なんだろ?
こうやって敵が目の前で何も出来ずジッとしてんだ。だったら自分の目的の為に
容赦なく相手をひれ伏させることくらい分かっているはずだとは思うがな。」

次は、クリフの声が、反射した。

「そんなこと、分かってはいるさ。だが、キミは現に逃げることは
出来ないから、こうして余裕を見せているのだよ。」

 フッ、と、クリフに向けて微笑を浮べる。

「言ったはずだぜ、わからねえってな。オレは、そうやって敵に余裕
見せて殺れるときに殺らねえで、結局は敗北を味わったヤツを知ってるぜ。」

「誰のことかは知らないが、それはそれ。今は今だ。」

 ヴィスコムはそう言ってから席を立ち、再びクリフの所へと歩み寄る。
それから、クリフの顎を指で持ち上げ、顔を覗き込む。

「しかたがない…。キミがそう言うのなら、キミの望みどうり
今すぐに犯るとしよう。」

 そして、ヴィスコムはクリフの上着に手を掛け脱がそうとする。
ゆっくりと、上品で丁寧な手つきで少しずつ。
それから、クリフの上前身がすべて露になった頃。ヴィスコムがクリフの
胸へと唇を下ろそうしたとき。

 突然。クリフの左腕がヴィスコムの背中を回り右腕の袖を掴んだ。そして、
くるりとほんの一瞬でクリフがヴィスコムの上になり、今までとは反対の形になる。

「だから、言ったろ?わからねえってな。どんな安モンのクスリを使ったのか
わからねえが、あんなもん気合でなんとかなるんだよ。」

 クリフが不敵な笑みを浮べてヴィスコムの顔を見下ろす。

「フっ…単純だな。それで、いつから効き目が無くなったんだね?」

 それでも、落ち着いたままのヴィスコムが自分を見下ろすクリフに問いかける。

「あんたが、椅子に腰を下ろしてる間だな。余裕を見せたあんたの負けだ。まあ
、少しはあんたの遊びに付き合ってやったがな。」

 クリフは下になったヴィスコムを解放して、部屋の入り口まで向かう。
ちょうど、ドアの前まで来た時、ヴィスコムに背を向けたまま立ち止まる。

「オレを犯したけりゃ、星一個ぶっ飛ばす兵器を用意するか、美人のねーちゃんに
生まれ変わるこったな。」

「フフフ…、ますますキミが気に入ったよクリフ君…。それでこそ、
犯し甲斐があるというものだ。」

「褒め言葉として受け取っておくぜ。」

 そうクリフは言い残し、この部屋を後にした。



FIN








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