HURT(後編)



 自分を拒むその目に、アルベルは腹が立つのを覚える。
どうすれば、自分を受け入れる?
何をすれば、無用なこの胸の痛みを消せる?
彼が辿り着いた答えは、強制的に自分を彼女に受け入れさせることだった。

 そうすれば…、この熱くて苦しい痛みから開放される。
体中の血が、沸きあがるような昂揚感と、自分が行っている行為は罪だと自己
に言う罪悪の意識。
それらが混ざり合った混沌の中にアルベルはいた。

「俺を解放させろ…」

 アルベルの口から発せられた言葉…、無用な痛みからの解放。
その言葉に、ネルは一つの考えがよぎる。

 このまま…、彼に犯されてしまえば、クリフへ向かう、救われない心は、痛み
は消えてしまうだろうか?

 救われない二つの心が、空回りする。

「……好きにすればいいだろ………。」

 ネルの口が言葉を、紡いだ。
何かを諦め、全てを投げ捨てたような口調で。

「…アンタの好きなように、犯すなりすれば………。」

 空気の色が変化した。
ネルの手首を掴むアルベルの手の力が、一瞬弱まった。
しかし、それもほんの一瞬のことだった。
 急に、アルベルの手の力が今まで以上に遥かに強くなり、ネルの細い手首など
簡単に折れてしまいそうな位に。





「だったら、…だったら、テメェの望み通りにしてやる!」



 アルベルは、怒りに湧き上がっていた。ネルにも感じ取れるくらいの痛み。
プライドの高い彼に、あわれみのような言葉を投げるなど、彼が一番嫌がることで
あろうに。

 アルベルの手がネルの手首を放し、その手がネルの上半身の衣服を引きちぎって
破ろうとする。
 ネルの全身に再び恐怖が駆け巡り始める。
何か、失ってしまう気がした。

 救いようのない痛みから、救われると思った。
それは、間違えだった。
自分を否定してしまう。




「……クリフ……」

 無意識に口から出た名前。
消すことの出来ない名前。

 今から行われる現実から逃れるように、ネルは瞳を閉じた。













「何してやがる。」

 声が聞こえた気がした。彼の、声が。


 目を開ける。
視界に、彼が、クリフが映っていた。
ネルの衣服を掴むアルベルの腕を、クリフが背後から掴み、そのまま静止している。
 そして、クリフはアルベルをネルから引き離し、床へと投げ飛ばした。

 ”ドスン”という音が、部屋に響いた。
クリフは、ネルの方を向き、二人の目が合わさる。

「疲れてんだろ?眠った方がいいぜ。」

 そう言ってクリフは、シーツを掴み、それをネルの全身に覆いかぶせた。

 シーツがネルを覆い被さり、視界が零になると同時にネルは感じた。
この部屋に広がる、もう一つの怒りを。冷たく凍りつくような怒り。
自分に向けられた怒りでは無いと感じるも、冷たく体を焼いてしまうような、クリフ
の怒り。

 それから、二人の足音が部屋のドアの方まで移動して、部屋のドアが閉まるような
音が聞こえた。


 この部屋から、二つの気配が無くなった。











☆ ★ ★ ★ ☆


 二人がこの部屋を出て行ってから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
その間、ネルはずっとシーツを被ったままだった。
何を考えていたのかは、自分でも分からなかった。


 ドアが開く音がした。
そこから、足音が近づいてくる。
その足音が、誰の足音なのかはすぐに分かった。
ゆっくりと自分の方へ近づき、ベッドのすぐ傍でそれは止まる。
それから、少しの間、沈黙が流れた。





「すまねえな………」

 クリフの声が聞こえた。

「もっと……、お前のことをちゃんと見ておけばよ…、それからアイツのことも。」

 クリフの後悔の声が、静かな部屋に響く。
ネルは被っていたシーツから顔を出す。

「別に……、あんたが謝ることじゃないよ。」

「けどよ。」

「言ってるじゃないか。あんたが悪いわけじゃない……。」

 それから、また沈黙が流れだした。
クリフはネルの瞳を見たまま。



 暫く、沈黙が続いたころ、クリフが動作を起こした。

 ネルが包まっているシーツを、ガバッと取って、クリフはベッドに横たわるネルを
自分の方へ力強く抱き寄せた。

「もう、離さねえからな。誰にも……、お前はやらない。」

 クリフが囁いた。
力強く、ネルを抱いたまま、離さないように、自分の一部のように。

「その言葉……、信じていいのかい?」

 クリフの腕に収まったまま、ネルが問う。
安心できる。…その大きな腕に抱かれているのなら。
力強く自分を抱くその腕の中からは、どんなにもがいても離れていけそうに無い。
そして、離してはくれないだろう。

「あたりめーだろ。」

 クリフは、笑ってみせた。自信たっぷりに。
離したくはない、誰にも渡したくはない、……彼女を。





おわり


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あとがき
すいません〜。めちゃめちゃ遅くなってしまいました;;(3ヶ月くらい)
しかも、口論というリクエスト内容がすっ飛んでました…。
なんというか、、、ほんとにごめんなさい!
リクに満足に答えることが出来なかった気がしますが、そのかわり、これからも、
ラブラブいクリネルを書いていこうと思います(…言い訳;;)
受験勉強、頑張ってくださいね!!
志望校、是非受かることをお祈りしております!!
それでは、こんなサイトへのリクエストありがとうございました!