HAPPY CRAB





「クリフ〜!」

「ああん?」

 デスクの上で大量の電子メールをチェックするクリフに、突然マリアが声を
かける。

「カニが食べたい。」

「カニぃ?」

「ええそうよ。確か、今夜は何も予定が入ってなかったはずよね?」

 確信的にそう言うマリア。

「まあ、たしかに予定は無ぇが…。オレはああいうちまちましたモンは苦手で
よ〜…。海鮮丼にしねえか?カニがどんぶりからはみ出したやつでいいから
よ。」

 困ったような顔で、マリアに向けてクリフが言う。

「ダメよ。カニじゃないとダメなの。」

 カニにこだわる理由があった。
本日、3764枚目のあぶらとり紙占いで、やっと出たいい結果。
『憧れの彼と二人でカニを食べれば好感度急上昇!!…するかもね。』
その言葉を信じて。
そして、さらに…。

「イヤとは言わせないわ。こないだのスタンプ集めの約束をすっぽかしたのは
誰だったかしらね。」

 更に言葉の刃をクリフの記憶に突き刺した。
勝負はすでに、クリフの完敗と言う形で終わっていた。

「あ〜わかった、わかった。カニだなカニ。」

 負けを認めるクリフの言葉に、勝利の笑みを浮かべて、無意識のうちにガッ
ツポーズをとるマリア。

「じゃあ、ミラージュやランカーやスティングやマリエッタのヤツらも誘ってやる
とするか。」

 そう言って、リーベルのことをすっかりと忘れているクリフは通信機の送信ボ
タンを押そうとする。

が、

 スッとマリアの手が伸びてきて、クリフから通信機を取り上げて、床にたたき
つけ粉砕させる。

「二人だけで行かない?」

 少し、乙女チックで邪悪な笑みを浮かべたマリアが言う。
ほんの2,3秒程の沈黙が訪れる。

「…じゃ、じゃあ、二人で食べに行くとすっか。」

「ええ。そうしましょう。」

 冷や汗をかいたクリフに対し、またしても無意識にガッツポーズをとるマリア
がいた。

「それじゃ、着替えてくるわね。」

 そう言って、マリアはヘタクソな鼻歌を歌いながら、スキップで自室へと向かう。

 部屋に着くと、ベッドへと駆け寄り、枕もとの人形を掴む。
ミラージュに作ってもらった、クリフを模った人形。
お日様の匂いと、汗と涙と唾液の臭いが混ざり合って、強烈なニオイを発する
それを胸に抱きしめた。

「行って来るわね。」

 特に唾液の臭いがキツイ部分に唇を当てる。
本物の彼の唇が許されないのなら、せめて身代わりのそれに。

「お〜い、まだか?」

「もう少し待ってて。」

 その身代わりが要らなくなるその日は、足音も立てず、マイペースでゆっくり
と、着実にマリアの元へと近づいている。






FIN







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あとがき
このネタが頭の中でぐるぐるしてるので書いてみたり…。先にこっちを書いてた自分…
絵日記よりネタを拝借しまくり。クリフ人形はかわいかった…vv
実は、ミサキさんがサイトを開かなければ、愛されクリフシリーズは生まれてこなかったで
しょう。(あのときから洗脳せれていたり…)

被害者の蝉矢から加害者のミサキさんへ。(洗脳のこと)