キミのいる不自由さを
〜前編〜





 公爵級のドラゴンを捕まえてこいと言われた。
嫌がるアルベルを無理矢理連れてくことになった。
アーリグリフの橋の近くにドラゴンに乗った気のいい兄ちゃんがいた。
アルベルの夫に頼まれたらしく目的地まで無料で連れてってくれるらしい。
ラッキーだった。
しかし、
任務に私情を挟まない。ということが生きがいであるニンジャさんが
「クレアに会いたいから歩いていこう」と言い出した。
ドラゴンに目的地まで乗せてってもらって、アリアスまで引き返した方が近い
と誰かが言った。
歩いたほうが時間的に早く着くからといってダダをこねだした。
そして、ニンジャさんは泣き出した。
クリフ以外、今すぐこのニンジャさんを橋の下に捨てて、ドラゴンに乗って
楽して目的地まで行きたかった。
アルベルが泣きじゃくるニンジャさんのマフラーを掴み、ニンジャさんを
川へと投げ捨てようとした。
クリフがアルベルの肩に手を乗せ無言で首を横に振った。
アルベルは仕方なく捨てるのを中止した。
クリフがニンジャさんの肩に手を乗せ「今回だけだからな」と言った。
すると、ニンジャさんの顔が満開の笑顔になり「早く行くよ」と言って
そそくさと歩き出した。
そんな彼女の笑顔を見た他のメンバーはドラゴンを捕まえに行くのもなんだ
かめんどくさくなり、アリアスに三日くらい滞在しようと決めた。
上には工事で足止めをくらったと言っておこう。

そして、アリアスへ着いた。
門をくぐった瞬間ニンジャさんが恐ろしいスピードでクレアのいる館へと走り
出した。
クレアに再会すると、抱きしめあい、両手を繋いでピョンピョン飛びはね
再会を喜びあった。
アルベルもなんとなくその館へと足を向ける。
それが、全てのはじまりだった・・・





















 アルベルは館の門をくぐり中へと入る。
中をあちらこちらと見渡した後、女性の話し声がする部屋を目指す。
 何故、彼が今ここにいるのかといえば、赤毛じゃないもう一人の方の
クリムゾンブレイドの顔を見にきたらしい。
いってみれば、ただの暇つぶしである。
 そして、ドアノブを回し中へと入る。

「かの有名なクリムゾンブレイドとやらの顔・・・を・・・」

 アルベルの時間が止まった。
 彼の視界には女神が映っていた。
流れるような銀色の髪。大きな瞳。透き通るような声。
彼女の存在そのものが彼の時間を止めていた。

 この部屋には桜が咲き乱れた(アルベルヴィジョン)
 クレアが起こす一つ一つの動作に粒子が舞う(アルベルヴィジョン)
 その声も女神がアンセムを歌っているようだ(アルベルイヤー)
 光が・・・そこにあった・・・












親父・・・
女神ってやつは本当に・・・
存在したんだな・・・





















「俺はかの有名なクリムゾンブレイドとやらの顔を拝みにきただけだ。」

 アルベルは時間を戻し、彼女に自分の存在を気づかせようと言ってみる。

「・・・それで、この前発売されたお菓子なんだけどさ、なかなかのモンだっ
たよ。」

「本当?それじゃ、今度私も食べてみようかしら。」

 クレアとネルは自分達の世界に入っているのか、アルベルの声は彼女達
の耳には届かなかった。


 30分後

「俺はかの有名なクリムゾンブレイドとやらの顔を拝みにきただけだ。」

 もう一度言ってみる。

「それでさ、アイツがさ・・・」

「ねぇ、ネル。あなたさっきからクリフさんのことばかり話してるわよ。
もうあの人が、ただの筋肉バカでお酒とセクハラが大好きなどうしようもない
人だってわかったから、違うお話をしない?」

「クレアは全然わかってないよ。たしかに、アイツはただの筋肉バカで酒とせく
はらが大好きなどうしようもないヤツだけど、あれでも結構頼れるところが・・」

「ほら、また・・・」

 やはり彼女達の耳には届かない。

 一時間後

「俺はかの有名なクリムゾンブレイドとやらの顔を拝みにきただけだ!」

 さっきよりも声を大きくして言ってみる。

「それで、この前アーリグリフに行ったときもさ・・・」

「ねぇ、ネル。私はあなたの親友として、あなたの心と体が心配なのよ。
あなたが、あの人と行動を一緒にするようになってから、心配で心配で
睡眠薬を服用しないと夜も眠れないの。だから、おねがい。今からでも
遅くないから、セラピーを受けましょ。講師は私がつとめるから。」

「心配かけてごめんよ。でも、あたしは大丈夫だからさ。それに、せらぴー
を受けるのはクレアのほうじゃ・・・」

 声は届かない。

 二時間後


「俺はかの有名なクリムゾンブレイドとやらの顔を拝みにきただけだ!!」

 彼はあきらめない。

「銅を取りにいくときもアイツが・・・」

「ほら、やっぱりあなたの頭の中はあの人の毒素で汚染されているんだわ。
あの人は危険よ。リストのレベルMAXに加えておくわ。今度彼を連れてきて。
地下の対ミサイル用シェルターに一生閉じ込めておくわ。」

「(リスト?対みさいる用しぇるたー?)」

 三時間後

「俺はかの有名なクリムゾンブレイドとやらの顔を拝みにきただけだ!!」

 それでも彼はあきらめない。

「でも、アイツって・・・」

「ネル。いつからあなたはそんな娘になったの?だから、ディオンが生前、
ネル様の髪はズラなのかな?って思い悩んで精神科に通いつめたんじゃ
ない!私はあなたがクリフさんの肉XXや雌XXにされている姿を想像する
だけで、吐き気がしてくるの!・・・おえ〜」

「クレア大丈夫かい!?ぞうきんを持ってきて!!」

「はい!ネル様!」

「まったく本当にアンタは心配性だね。肉XXや雌XXなんて女の子が口に
出すもんじゃないよ。それと、あたしはズラじゃないし、植毛でもないからね。
それに、それは関係ないじゃないか。」

 四時間後

「俺はかの有名なクリムゾンブレイドとやらの(以下略)」

 がんばれ。

「・・・だけど、アイツって・・・」

「もう、わかったわ。今度彼の料理を作る時にはこの薬を混ぜればいいわ。」

「これは・・・なんだい?・・・Hg?」

「それを使えば彼はあなたのものよ。」

「アンタの気持ちは嬉しいけどさ。わたしはそんなモノに頼るつもりも無いし、
そ、それにアイツのことは別に・・・(照)。気持ちだけ受け取っておくよ。」

「(チッ)」

(Hgとは水銀のことである。)

 五時間後

「俺は(以下略)」

「このせんべいおいしいね。」

「もう30枚目よ・・・あ、あなたもしかして・・・お腹に彼の・・・・そんなの私
耐えられないわ。あなたから生まれつき筋肉モリモリの赤ん坊がでてきて
あなたは毎日の子育てに疲れてノイローゼになって、お酒ばかり飲んでい
る彼に毎日のように暴行を受けて、彼の分身が一人から二人。二人から
三人へと増えていくんだわ。もしも、そんなのになったら私、清水寺から
飛び降りて死ぬから。」

「クレア・・・アンタすごいこと言ってるよ。それに、アイツはそんなことする
ようなヤツじゃないし、私はただ、お腹が空いていただけだからさ。あたし
は妊娠なんてしてないよ。」

「ホント?よかった。それに、あなたが妊娠してるかどうかは明日になれば
わかることだしね。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでアンタが知ってるんだい?」

 それを疑問に思いながらもネルはクレアの頭を撫でてやる。
ふと、ドアの方を見るとアルベルが立っていた。

「・・・アンタ、何時からそこいたんだい!!?」

「五時間前からだ阿呆!」




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