「で、何か用かい?」

 ネルはアルベルを睨み付けながら言う。

「・・・ヅラには用は無い。」

 アルベルは横目でクレアの頭を撫で続けるネルに言う。

「ねえ、あの変な格好をした方はどなた?」

 クレアはネルに問う。
その問いにネルは約十分かけてアルベルについての説明をする。
そのうち、九分くらいは彼の悪口であったが。

「・・・・・ってわけなんだ。」

「へえ。あの方があのアルベルさんなのね。」

 ネルはクレアに、あまり近づいてはばい菌がうつるよ、と言ったが、
クレアは、後で消毒をすれば大丈夫よ、と言ってアルベルの方へと
近寄る。

「はじめまして。クレア・ラーズバードと申します。」

「・・・・・・・・・・フン。」

 クレアはアルベルの前で行儀良く上半身を傾けた。
アルベルの顔は真っ赤になる。
 ネルはクレアを、アルベルの前から引き離し、クレアの全身に消毒
スプレーを吹きかけた。

「そうだわ。アルベルさんにもお茶を出さなきゃ。」

「こんなヤツにお茶なんて勿体無いよ。たしか、二ヶ月前の牛乳がまだ
残っていただろ?それを出してやりなよ。」

「え、でも・・・」

「いいのさ。」

「わかったわ。それじゃあアルベルさん。少しの間待っていて下さいね。」

「・・・・あ、ああ。」

 クレアはアルベルに笑顔を向け、台所へと向かう。
アルベルの頭は二ヶ月前の牛乳がどんなものなのか想像する能力さえ
失っており、顔を赤くしながら台所へと向かうクレアの姿をずっと目で追
っていた。
 そんなアルベルの様子を見ていたネルの頭から、ピピッと何かを受信
したような機械音が鳴り響いた。

「なあ、アンタもしかして・・・クレアに見とれてるのかい?」

 ネルがアルベルにそう言うと、彼はクレアから視線をバッと離し、ネル
の方へと移す。

「フン。そ、そんなわけ無ぇよ!」

 と、言いながらネルの方へと移した視線が、再びクレアの方へと戻っ
ていく。

「クレアは可愛くて綺麗だろ?」

「ああ。あんな女神のようなクソ虫ははじめて見たぞ。」

 もはや、アルベルの思考は言葉さえ選ぶことも出来ず、本心のままの
言葉が彼の口から放出される。そして、フラッと我にかえりネルの方を
見る。

「い、いや違う。あんな美しい女のどこが綺麗だって言うんだ!?」

 やはり、彼の思考は何処かおかしい。

「クレアに手なんて出してみな。明日のズームイン朝を拝めないように
してあげるからさ。」

「・・・・だ、だからあの女には興味なんて無ぇよ阿呆。」

 アルベルがそう言ってすぐに、クレアが台所からとても優雅な香りを
させたお茶を二杯と、臭覚を麻痺させるような臭いをさせた牛乳を運
んできた。

「ネル。アルベルさんを虐めたりしてないわよね?きっと、この人は小さ
いころからイジメにあって人間不信になっていて、それで歪みのアルベ
ルなんて恥ずかしいにも程があるようなあだ名を付けられたのだと思う
わ。だから、あまり虐めないであげてケロ。」

「別に虐めてなんてないさ。(ケロ???)」

 クレアがテーブルへとお茶と牛乳を上品な手つきで並べる。

「それじゃぁ、アルベルさんもこちらへ来て座ってください。アルベルさん
の椅子はありませんけど。」

 クレアがそう言うとネルは、奥の倉庫へと走り出し、みかんの空き箱を
抱えてきてアルベルの前へ置く。

「アンタはこれで充分だろ?」

 ネルはアルベルにみかんの空き箱をテーブル代わりにしろと言っている。

「ネル!それがイジメっていうものなのよ!これじゃ、ますますアルベルさん
が人間不信になっちゃうじゃない!アルベルさんが自殺をしてからじゃ取り
返しがつかないでしょう?さあ、アルベルさん。こちらにきて私たちと一緒に
お茶にしましょう。」
 
 アルベルは自分がなんだか情けなく思ったが、クレアの優しさがとても心
地いいと感じる自分が居ることに気づく。今まで彼は、父とウォルターのジジ
イ以外に「優しさ」を与えてもらった記憶が無いから・・・
いつから、自分が人間不信だと勝手に決め付けられたことに対するツッコミ
はもはや、彼の頭には存在しない。
 とりあえず、窓際にいたおかっぱ頭の施術士は爆笑していた。

「クレア。これはイジメなんかじゃないよ。人間不信のヤツがいきなり人の輪
には溶け込めないさ。だから、最初は距離をおくんだよ。」

 ネルはクレアに笑顔を向け、アルベルには睨みをくれてやる。
このとき、アルベルはネルに対する殺意を覚えた。

「確かにあなたの言うことも一理あるかもしれないわね。それじゃ、アルベル
さんはそこで、一人寂しくわびしく牛乳を飲んでいてください。本当に申し訳あ
りません。」

 クレアは頭を下げる。

「・・・・・・・俺のことは気にするな。」

 アルベルは顔を真っ赤にしながら、二ヶ月前の牛乳約500mlを一気に飲
み干す。

ゴクゴク

「お味のほうはどうでしょうか?」

「・・・・・・・うまい。」

 クレアの前では味覚すら消滅する。

「二ヶ月前の腐り果てて人間の飲むようなモノではないものを美味しいだな
んて・・・あなたっておもしろいかたね。ふふふ。」

 クレアはにっこりと微笑みを浮かべる。
不味いと分かっていて出したのかなんて誰も考えてはいなかった。クレアの
その言葉を聞いたネルの頭の中ではまたも、何かを受信するような無機質な
機械音が鳴り響いた。ネルはクレアのアルベルへ対する好感度の上昇は1_
たりとも見逃さない。そして、ネルは一つの答えを導き出した。



コノオトコハキケンダ・・・
ショウライ、クレアノミライ二キセイスルダロウ・・・










































「うあああああああああああ〜」

「ネル!?どうしたの!!?」

 クレアの声もネルの耳には届かず、ネルはゴム手袋を何重にもはめ、
アルベルの首からぶら下がっている鎖を掴み、アルベルを部屋の外へと
追い出した。

「アンタ、二度とクレアに近づくんじゃないよ!!ペッ。」

 ネルはアルベルの顔に唾を吐き、さらに彼の顔をめがけて殺虫剤を吹
きかけ、部屋のドアの部分に塩を撒き、バタンとドアを閉めた。

「ちょっとネル!!今の酷いわよ!!あれじゃあ本当にアルベルさんが
自殺しちゃうじゃない!!彼は心に病を抱えているんだから、もっといた
わって接しないとダメじゃない!!彼が心配だわ。」

「アイツはそんなことでは自殺なんてしないよ。多分。それより、アイツが
立っていたところを消毒しなきゃね。」

プシュー












 そして、その後二度とアルベルはネルが居るときは、あの部屋へと入る
ことは出来なかった。
 それから、このパーティはクロセルを捕まえにいった。
でも、このパーティは弱いのでボロボロにされた。
で、しかたなくミラージュを連れてきた。
彼女は左手のデコピン一発でクロセルを倒した。

 クロセルを捕まえシランドへ戻るとアルベルは姿を消していた。
彼はまずトイレへ行き、クレアの居るアリアスへと走っていた。
ネルが不在の内に・・・

「・・・・・・・・・ハァハァ。ゼェゼェ。」

「あら?こんにちわ。アルベルさん。」

 空では爆音が鳴り響く。
やがて、それが静まると、シランドの辺りから、この部屋へと殺気がもの
凄い速度で近づいてくる。




赤い髪を揺らして・・・






おわり

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ちょっとあとがき
このサイトにしては珍しく微ハッピーエンド????
あのあと、アルベルはどうなったのか知りませんけど(笑)
初書きクレアさん!!あくまで彼女はネルに親友として接してます。
こんなんじゃクリフにもアルベルにも真ハッピーエンドは訪れませんね(笑)
ってゆーかクリブレの二人黒っ!!!!こえ〜
クレアさんは本気でクリフの暗殺を企んでますvv
クレアさんは絵も文も書いていて一番楽しいかも。彼女多分これから増えていきそうです。