此処にある「真実」




 ゆらり、ゆらりと風が吹き、外には闇が広がっていた。
空には作り物であるはずの月も星も見えない。
窓の外には作られた闇だけ。


 時間的にそれほど長い期間離れていたわけではなかったが、
故郷であるこのシランドに帰ってきたのは久しぶりなような気がした。
 ネルは城の中にある自室で、窓の外を眺めながら、そう思っていた。

 この地も、この城も、この世界に住む人々も、そして自分も作り物だと
いう事実を知ってからまだ一日も経っていなかった。
 信じられなかった。
 今まで生きてきたこの世界も、接してきた人々も、
 全部作り物だったなんて。
 それでも、神がこの世界を創造したなんてよくある話で、ただそれが、
本当だったと思えば、無理矢理自分を納得させれるのかもしれない。
けれど、そう簡単には自分の心がそれを理解させてくれない。

「・・・何も変わらないのにさ。」

 ふと、今まで見てきた風景と同じ風景を見ながら呟いた。
それから、色々な考えを頭の中で迷わせていると、トントンと部屋のドアを
ノックする音が聞こえてきた。

「誰だい?」

「ああ、俺だ。邪魔してもいいか?」

 誰だと聞き返せば、聞きなれた太い声が返ってくる。
特別だと思える人の声。だけど、その人も、その声も作り物。

「ああ。入りなよ。」

「そうか。それじゃ、お邪魔するぜ。」

 クリフはそう言ってドアノブを回してネルの居る部屋へと入り、近くに
ある椅子へと腰を下ろす。それと同時にネルも窓からクリフへと視線を
移した。

「フェイトと一緒じゃなかったのかい?」

「アイツなら疲れて寝ちまったよ。」

「そう。アンタも疲れてるんじゃないのかい?」

「まあ、疲れてねえといえば嘘になるがな。・・・だが、まだまだやることが
たくさんあるんだぜ。こんなところでへこたれてるわけにゃいかねぇだろ。
そういうお前こそどうなんだ?」

 クリフは笑顔で言う。
 確かにその顔には、僅かではあるが疲れている色が見えた。

「私も、アンタと同じかな。正直言えば、少し疲れてる・・・」

「あまり無理すんじゃねーぞ。」

 クリフはそう言い、ベッドに座るネルの横へと自分も腰を掛け、彼女の
肩へと腕をまわし自分の方へと寄せる。
そして、クリフはネルの額へと軽く唇を当てる。

「アンタもね・・・。この世界が作り物だと知ったときアンタはどう思ったん
だい?」

「そうだな。まぁ、最初は信じられなかったが、今となっては別になぁ。
それを知って何かが変わるわけでもねぇし、頭で理解しちまえばどうって
ことねぇよ。」

 クリフはいつもの調子で言う。

「アンタらしいよ・・・」

 ネルはクリフの胸へと手と自分の頬をあて、そっと囁いた。
少し、彼のそう簡単に理解出来る部分が羨ましかった。

「私はまだ信じることが出来ないよ。頭で理解しようとしても、心が理解
してくれなくてさ・・・私もアンタも・・・作り物だってことをさ。」

「だったら、確認すればいいじゃねえか。」

 クリフは突然そう言い、ネルの肩と腰に腕をまわして、そっとベッドへと
体を倒させる。

「作り物でも、俺は俺で、お前はお前だってことをよ。」








 クリフは自分の唇をそっとネルの唇へと重ねる。
軽く唇を重ねた後、一度唇を離し、再び、今度は深く重ね、互いの舌を
絡ませる。その感触が二人の理性を熱くゆっくりと溶かしていく。
 唇を離し、クリフはネルの腰にあてていた手を、彼女の胸の膨らみへと
移動させ、唇は右耳へと移動させる。
 優しく唇で耳たぶを挟み、舌先でゆっくりとその形をなぞる。耳を舌で何
往復もさせると、首筋へと舌を這わせる。
 ざらついた舌先が線をなぞるのと同調するようにネルは吐息を漏らし、
その感触と音声がクリフの耳へと届くと、体の奥から相手を本気で求め
ようとする何かが働きだす。

 クリフは自らの衣服を全て脱ぎ捨て、ネルの身をまとう全ての衣服を
剥がしはじめる。少し複雑な作りになっている服ではあるが、何度も脱が
したことがある故、どこを取ればいいかは分かっていた。
 全てのものを剥がし終えれば、後は心を剥がすだけ。

 そして、唇を首筋へと戻し、舌先を鎖骨へと移動させ、最終的には胸の
赤い部分へと辿り着く。
 その部分を何度も舐めまわし、時々歯をたてれば、ネルの口から漏れ
る吐息は声に変わる。やがて、クリフは手をネルの下半身へ運ぼうとす
れば、

「私には・・・させてくれないのかい?」

 ネルが吐息混じりの声で言う。
すると、クリフは小さく笑い、無言でネルの肩へと手をまわし、くるりと上と
下を反転させる。
 ネルはクリフの、とても厚い胸板へと唇をあて、舌を這わせる。
何度も何度もそれを繰り返す。
 クリフの多数ある女性経験からして、まだ、それがあまり上手でないこと
がすぐに分かる。ただ「される」だけなら、それをビジネスとしている女性の
ほうが性感的に心地よいだろう。しかし、今こうして、一番大切な女性が、
無い知識で自分を喜ばせようと一生懸命していることが、クリフにとっては
とても心地よかった。
 やがて、唇は胸から、彼の唇へと移動する。

 クリフは再びネルを下へと移し、まだ閉じているネルの下半身へを開こう
と、そこへ指を一本入れる。優しく指を動かし、時に激しく動かせば、押し殺
しているネルの声が口から飛び出る。クリフにはその声がとても可愛く、とて
も愛しく思えた。指を増やし、同じ事を繰り返せば、そこは開ききり、濁った
体液が漏れ出していく。

 そして、二人は交じり合う。

 熱くなったネルの体内で、お互いにもっと深い刺激と熱を求め合う。
クリフはネルの上半身を起こし自らの胸へと抱き寄せ、唇を重ねあう。
ネルもまた、クリフの腕で、自分の二倍以上ある敵を殴り倒し、人一人簡単
に殺めることができ凶器にもなるようなその太い腕で、今は自分だけを強く
優しく抱きしめているぬくもりが心地よいと感じていた。
 初めての時の痛みも、その腕でやさしく包んでくれた。





 自分達が作りものだとしても、今此処に存在している自分達も、ぬくもりも、
愛も、全てが真実であるということが、互いに触れ合えば分かる。
 作り物であっても、それが此処に存在すればいい。
 だけど、作り物であるが故、この真実が壊されようとしている。
 だから、この愛しさが「ひととき」で終わらせないように、壊されないようにす
るために自分達は戦っていく。
 あしたも、あさっても、互いの存在を認めていたいから。





 喘ぐ声が激しさを増し、二人は最高潮まで昇りつめた。
互いの体を強く抱きしめ、その存在を胸に刻みつける。
本当は、一時も離れたくないけど、色々なものがそれを許さないから、
だからせめて、今だけは・・・

 そして、いままでの行為とはまるで違う静かな優しいキスを交わす。
その存在が真実だと確認するように。











終わり

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ちょっとあとがき
初エロ作品だよ〜!!(え、そうだっけ?)そして、隠す気もまったく無し!
とりあえず、フェイネルでもアルネルでもクレネル(!)でもなくて、クリネルじゃないと
出来ないような事を書きたいです。今回がんばってHシーンにそういうところを
出しましたが、読み返してみるとビミョ〜(苦笑)