LUNA第一話
〜大好きな人〜






 ぺターニの高級ホテル。ドーアの扉。
そこの一室の大きな部屋の真ん中に置かれた大きなテーブルには、色とりどり
の料理が沢山並べられている。
 ニンニク料理やスッポン料理をはじめ、若鶏のから揚げやイタリアンサラダにカ
ツ丼、それからカレーライスやカップヌードルやビーフステーキまである。デザート
にはフルーツパフェもついてある。本当に沢山並べられていて、大男が23人くら
い居ないと、全てたいらげられないくらいの量である。

 そんな色とりどりの料理が並べられたテーブルを囲む、色とりどりな頭をした7
名。

 テーブルに並べられた料理の品々は、大好きな人のために、みんなで仲良く協
力しあい、汗とよだれをたくさん流しながら、一生懸命溢れないばかりの『愛』を
込めて作ったものである。

 今、7名はその人の帰りを待っている。

「早く帰ってこないかな、クリフのヤツ。」
「ああ。きっと今頃、腹を空かせて歩いているんじゃないのかい?」
「いつも、遅いんだってばよ。」
「クリフさん、きっとビックリするよね。」
「俺のが一番旨そうだ…。」
「クリフちゃん、はやく〜!」
「これだけ作れば、クリフも大満足のはずよね。」

 大好きな人の帰りを待ちながら、大好きな人が目の前の自分達が作った料
理を食べ、笑顔になるのを想像するだけで、顔がニヤけて大量のよだれが流
れ、自分たちまで幸せな気分になってしまう。

















 それから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
クリフの帰りを待つ間、みんなでカタツムリごっこしていたときだった。

「帰ってきたわ!」

 マリアがそう叫んだ。その声に反応して、クルクルネバネバニョキニョキし
ていた他のメンバーも起き上がった。

「どうやら、そのようだな。」
「はい。わたしにも分かります。」

 それに続けて、アルベルとソフィアも言う。
すでにこの人たちには、クリフが近くに居ればその存在を感知することが出
来るようになっていた。

 ”ゴツンゴツン”と、クリフがこの部屋へ近づいてくる足音を感じる。クリフだ
けの歩調で、クリフだけの足音で。


 大好きなあの人が、帰ってきた。

 そして、7名はドアのほうへと歩み寄り、腕を大きく大きく広げて、その扉を
開けこの部屋へと入ってくるだろうクリフに、誰よりも早く抱きつけるようにと体
勢を整える。

「もう、そこまで来ているようだね。」
「負けるわけにはいかないじゃんよ。」

 息を呑み、心臓のリズムがテンポを上げる。
もう彼は、本当の本当にすぐ傍まで来ている。
5歩、4歩、3歩、2歩、1歩さがって、2歩、1歩…、そして、ドアが開いた。










「よう。今帰った…、おわっ!!!」

「「「「「「「お帰り!クリフーーー!!!!!」」」」」」」

 ドアを開け、少し疲れた顔をしたクリフがこの部屋へと入ってくると同時に、
7名はそう叫びながら、ドカドカガサガサバキズボっと、いいポジションをゲット
しようと、もの凄い勢いでクリフに抱きついた。

「お帰りクリフ、待っていたわ!」
「遅いぞ阿呆!」
「あたしたちが、どんな思いであんたを待っていたことか…」
「会いたかったですクリフさん!」

 みんな、凄く幸せそうな顔で、それぞれの言葉をクリフに言う。

「…………っ、……っ、…………っ!!」

 しかし、クリフからの返事は無い。
何か、もの凄く苦しそうな表情を浮べて悶えている。
 その原因は、すぐに分かった。
ちょうど、クリフの特別に大きい男としての身体的象徴に、ロジャーが頭から
突っ込んだらしく、ヘルメットがその部分に当たってしまっていたらしい。

「僕達は、お前のためにみんなで料理を作ってたんだぞ。」
「ええ、そうよ。早く食べましょ!」

 痛みに悶えるクリフの表情にみんなドキドキしながらも、クリフの足を引っ
張り、痛みと疲れが混合したクリフの体を床に引きずらせながらテーブルま
で運び、クリフを食卓に座らせた。
 もちろんその後、クリフの横の席の奪い合いが始まったが、少し頭が賢く
なったメンバーは10分後、クリフの横にはカバのぬいぐるみを座らせ、み
んな平等ということにした。













「これ、み〜んなアタシたちが作ったんだよ。」

 スフレが両手をいっぱいに広げ、クリフに言う。

「おっ、そうなのか。へへへ、随分と旨そうじゃねえか。お前ら、ありがとな。」

 クリフも、輝きに満ちた笑顔を浮かべ、言った。
この料理を作ってくれた仲間達への感謝の言葉を述べたい。けど、そんな言
葉で言い表しても、この感謝の気持ちを完全に伝えることは出来やしないであ
ろうし、それはそれでとっても面倒だということもあり、全ての気持ちをその言
葉に込めた。

「遠慮しないでいっぱい食べてね。」

 その気持ちはみんなに伝わっているのか、みんな笑顔になっている。
みんなの代表としてマリアがクリフにそう言った。手にはちゃっかり、ステーキ
一枚まるごとぶっ刺したフォークを持ち、それをクリフの口に運ぼうとしている。

 その瞬間。空気の色が変わった。
ネルが”バン”とテーブルを叩いて席を立つ。

「マリア。あんた、それはルール違反ってもんじゃないのかい?確か、さっきの
ジャンケンでは、あたしが最後まで勝ち残ったはずだけどね。」

 和風ハンバーグをぶっ刺したフォークを持ったネルが言う。
どうやら、誰が最初にクリフに食べさせるかどうか、あらかじめジャンケンで決
めていたらしい。

「あれは私の次に誰かっていうことよ。」

 マリアがそろりとフォークをクリフの口に近づけながら言い放った。
空気は、険悪さを極める。

「ま、まあ、そんなピリピリすんなって…。ちゃんと全部」
「食わせたもん勝ちだ!阿呆どもが!!」

 この空気をどうにかしようとするクリフの言葉を完全に無視して、アルベルが
カツ丼のどんぶりを持って、クリフに飛びかかった。
 そして、台風が巻き起こった。

 アルベルに引き続いて、全員がそれぞれの料理を皿ごと手に持ってクリフに
飛びかかっていく。いろんな料理がクリフに襲いかかる。クリフには料理を味わ
う暇さえ与えず、次から次へと料理をクリフの口に詰め込んでいく。
 そんな時間が20分ほど続き、クリフは料理を噛んで飲み込むことが出来なく
なった頃。フェイトは料理を口へと運び、それをクリフの口へ口移しで食べさせる
戦略にでた。

 台風はおさまり、次は、その後のあつさに苦しむ。

 みんなそれぞれフェイトを真似て、口いっぱいに料理を詰め込んでクリフに食
べさせようとする。しかし、口移しで食べさせることなど、1対1でしか出来ないこ
とだった。
 そこでみんなは、とりあえずクリフを椅子に縛りつけ、彼の自由を奪ってから、
誰が一番最初にクリフに口移しで食べさせるかを、指相撲をして決めた。

 激しくラブパワーとラブパワーがぶつかり合い、一番手としての勝利を得たの
は、またもネルだった。

 椅子に縛り付けられ、今から自分に降りかかる恐怖が顔に表れているクリフ
に、料理を口いっぱいに詰め込んだネルが近寄る。
 そして、そのままクリフの口を手でこじ開け、口を移して口内にふくんだありっ
たけの料理を、クリフの口内へと流し込んだ。

「うぐ……うむぐぐぐ〜ぐむううむぐ」

 クリフがそう言った。
確かに、クリフの言うことは一理あるだろう。

「むぐぐ、むぐううぐぐぐぐむうう。むぐぐむぐ。」

 ネルが優しい口調でそう答える。
彼女らしく、はっきりとした意見である。もしかしたら、ネルが言ったとおりなの
かもしれない。


 やがて全ての料理をクリフに移し、ネルはすっきりとした表情でクリフの傍を
離れていった。次は、フェイトの番である。フェイトは自分の番になるとすかさ
ずクリフに口移しで料理を流し込んだ。
 順番を待っている他のメンバーは、口に料理をふくんだまま、まるでハムス
ターのように頬を膨らませながら、まだかまだかと自分の番を待っている。
 マリアに至っては、汁物をふくんでいるらしく、その汁を口からだらだらと垂
れ流している。

 クリフには、料理を味わう余裕なんて無い。色々な料理が混ざり合ってもの
凄い味になっているであろう。しかし、その料理に込められた無限大の『愛』は
確かにクリフへと伝わっていた。






 幸せだった。みんなもクリフも。
大好きな人と一緒の空間で、一緒に時間を刻んでいけることが。
他には何もいらない。それだけで幸せなのだから。
ずっとずっと、この時間が続けばいいと思った。





 それから、すべての料理を食べ終えたクリフとみんな。
次は、クリフと一緒にお風呂に入る時間である。クリフの近くに居るだけで心
が温まるのに、一緒に入れば体まで温まる。
 と、そんな時間に心を弾ませながら、みんなはお風呂場まで歩き、その後ろ
をクリフがついていっていたとき。


”バタン”

 突然、クリフの体が床に倒れ落ちた。

「クリフ!!!?」




つづく(第二話へ)





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始めちゃったよ!
題名の理由は、日記を読んでくださってる方なら分かるかもしんないです^^
あらすじは全部できてるので、結構早め早めに更新していけそうです。