LUNA・第二話
〜断絶〜



 突然床へ倒れ落ちたクリフの元へ、みんなは駆け寄る。

「クリフ!どうしたの!?」

 マリアはポンポンとクリフの頭を叩いてみる。けど、クリフからは何の
反応も返ってはこず、ただ無表情なまま、そこへ倒れているだけである。

「しっかりしろよクリフ!」

 フェイトが言って、クリフを蹴ったりする。みんなも、ただクリフは食べ
すぎで眠っているのだと思い、彼を眠りから覚まそうと、ドカバキと蹴っ
てみる。しかし、それでもクリフは下らないシャレを聞いたときの様に無
表情な顔で、そこに横たわっているだけである。



 一瞬。みんなの脳裏に最悪の予感がよぎる。
そんなことはない。あるはずはない。と、どれだけそう自分に思い込ま
せても、湧き水の様にその予感は次から次へと沸いてくる。



 マリアは、通信機を取り出して誰かに連絡を取ろうとする。

「もしもし!ミラージュ!?」

『ヘイ!こちらラーメン龍道軒』

 ピ。
マリアは通信を切断した。かなり動揺しているらしく、どこかのラーメン
屋に間違えて通信を入れてしまったらしい。
 そして、もう一度ミラージュへと連絡を取ろうとする。

「もしもし!ミラージュ?」

『はい。マリア?どうかされましたか?』

「クリフが!クリフが大変なことになったの!!ブヘッ」

『わかりました。すぐにそちらへ向かいます。』

 思いっきり動揺を隠せないマリアとは正反対に、ミラージュはいつもと
はまるで変わらない口調でそう言い、通信を切った。
 それから20秒後くらい。クリフを起こそうと必死になって彼をボコって
いるみんなの前へ、ミラージュは姿を現した。

「おそくなりました。」

「うわっ!早っ!」

「ミラージュさん、こっちです!!」

 ミラージュはフェイトに案内されるまま、クリフのもとへと歩み寄る。
そして、クリフの脈を、とても丁寧な手つきで確かめる。彼の脈を確認
することくらい、みんなにも出来たはずだが、その『答え』を知るのが怖
くて、誰も出来はしなかった。
 ミラージュがクリフの脈を確かめている間、空気は漬物石のように重
く、時間はガリガリ君のように凍てついていた。



 やがて、ミラージュがクリフから手を放し、みんなの方へと目を向け
る。そして……、目を閉じ、首を横に振った。




 それは、クリフの『死』を表現する動作だった。



「ミラージュ。こんなときに冗談はよくないわ。ボヘッ」
「そうですよ。ミラージュさんも人が悪いな。ボヘへッ」

 その現実を受け止めることを拒絶するマリアとフェイトが、かなり動揺
しながら言う。

「彼の脈はありませんし、息もしていません。完全に…死んでます。」

 ミラージュは表情一つ変えずに、みんなへこの現実を受け止めさせよ
うと、冷酷にも言う。

「じゃあ…何で、何であいつは死んだんだい?」

 ネルが少し怒り口調でミラージュに問いかける。認めたくは無い。クリ
フが死んだなんて。そんな口調である。

「それは…、『愛』の過剰摂取です。」

 ミラージュは続けた。

「我々クラウストロ人は、外面的な肉体的の強さこそ持ってはいますが、
内面的な内臓器官などの強さは、地球人とはさほど変わらないんですよ。」

「だけど…」

 ソフィアが相槌を打つが、それを無視してミラージュはまだ続ける。

「大きすぎる『愛』は、時に人を死に至らしめます。……それが彼の死因
です。」

 ミラージュは、そう全てを言い終えた。

 それでも、悲しみという感情は沸いてこなかった。
みんなはまだ、クリフがひょっこり”あ〜よく眠れたぜ”と言って、起き上が
ってくるのだと思えて、しかたなかった。もしくは、クリフとランカーとミラー
ジュが仕組んだドッキリカメラだと思っていた。
 ミラージュにそう断言されても、みんなはその現実を受け止めることが、
出来なかった。



 ミラージュは、この現実をしっかりと受け止めている。
なのに、少しも悲しむ素振りは見せない。ましてや、昔からのパートナー
なのだから悲しくないわけがないのに…。
 けど、だからこそクリフのパートナーとしてやってこれたんだとみんなは
思った。


 みんな、ずっとミラージュに嫉妬していた。
クリフとの間には、甘い感情なんて無いのだと分かっているのに、あたり
まえのようにクリフの近くに居て、あたりまえのようにクリフのことは何でも
知っている彼女を。
 けど、それと同時に、どこか憧れてもいた。今は、どうして憧れていたの
かがよく分かる。
 ソフィアに至っては、鏡の前でミラージュ風にメイクをし、むいぐるみをク
リフに見立てて、”クリフ。あまり食べ過ぎるとお腹を壊しますよ””お腹を
壊しても知りませんからね”とかミラージュ風の口調で言って、ミラージュ
の真似をしていたところを、クリフに見られていたという、痛い思い出もあ
ったりする。




「クリフを…、火葬します。」

 ミラージュがうつむきながらそう言った。
みんなは、命がけのビックリカメラだなと、思っていた。







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クリフが死んじゃった。死因は重要…なのかな。
とりあえず、愛されクリフでのミラージュさんは、
「クリフ。あなたのまわりは相変わらず賑やかですね」
って言う感じで傍観してます。さすがに、パートナーなので乙女ではないと。
で、カップリングものでは
「クリフ。彼女(彼)を泣かせたら、あなたのパートナーはやめさせていただきます。」
みたいな感じ。