LUNA・第五話
〜デリシャスライト〜






 手にはとうもろこし一本。背中にはカエルしゃん。もそもそと、耳に有害な
鼻歌を歌いながら、アーリグリフへの長いのか短いのか微妙な道のりを歩
くネルの姿がある。

 崩壊したペターニで住人に文句を言われながら抜け、肥溜め臭いアリア
スの領主館のクレアのもとでごはんを食べ、カルサアの道具屋でカエルしゃ
んの菓子玩具を一つ購入して、アーリグリフへと向かった。

 カルサアを抜ければ、そこは不自然なくらいの白銀世界。肌が凍てつくよ
うな風邪を身に受けて、テコテコと走れば、あっという間にアーリグリフの前
に掛かる無駄に大きい橋へと着いた。
  すると、その橋の上で非常に見覚えのある人物を見かけた。

「あんた、何してるんだい?」

 背中にはウサギちゃんを縛りつけ、手にはほうきを持って、橋の上を一
生懸命掃除しているアルベルの姿があった。そんなアルベルがネルの声
に気づいて、彼女の方を見た。

「お前か…。生憎、俺は忙しいんだ。虫歯が痛いとかの相談なら他をあた
るんだな。」

 アルベルはそう言って、再びせかせかと橋の上をほうきで掃き始めた。
彼のその後姿からは、以前まで腐った牛乳のニオイの様に漂わせていた
闘気が完全に消えうせていた。
 そんな彼を見て、ネルはすぐに直感することが出来た。この目の前にい
るヘソ人間も、自分と同じで、あの日から心の中にあった何かを失って、
それで何を失ったのかが分からないままなんだと。

「あんたにこれをあげるよ。差し入れさ。」

 ネルはそんなアルベルに少し共感して、先ほど購入した菓子玩具のラ
ムネ菓子を渡した。

「ほう。たまには気が利くじゃねえか。」

 アルベルはそう言って、袋を器用に破って、とても美味しそうにラムネ
菓子をむさぼり始めた。

「アルベルさーん!」

 アルベルがむしゃむしゃとラムネ菓子をむさぼっているところ、橋の下
から可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。その声の主がソフィアである
ことがネルにはすぐに分かった。

「終わったようだな。」

 その声が聞こえると、アルベルはそう言い、橋から川へと吊り下がった
ロープの方へと歩み寄り、それを頑張って引っ張り上げた。ある程度引き
上げると、そのロープの先端にくくり付けられたソフィアが顔を出した。

「やっと終わりました。これで口から肝臓が出るほど臭かった川もピカピカ
になりましたね。」

「ご苦労だ。あとでガリガリ君でも食うか。」

「こんなクソ寒いのにそんなもん食べませんよ。この××野郎が。」

 まったくだ。そんな二人の会話を聞いていたネルは、こっそりとソフィア
の意見に同感だった。

「あ、ネルさん!」

 ソフィアがネルの存在に気づいて、視線をネルの方へと向けた。

「ああ。久しぶりだね。」

「ところで、アルベルさんもネルさんも大丈夫なんですか?そんな寒そう
な格好で。」

 ソフィアの顔が、心配する表情に変わり言った。

「ああ。俺は慣れている。」

「あたしも、やせ我慢してるからね。」

 と、ネルとアルベルはそう答えた。アルベルは心の中で”やせ我慢か
よ!”とネルにツッコんだ。ネルは、鼻水を凍らせているアルベルを心
の中でせせら笑った。

「ちがいますよ。私はこんなに寒いのにそんな格好をしているアルベル
さんとネルさんの頭のことを心配しているんです。脳みそが××になっ
て、××していて、××ってるんじゃないかと…。大体、未開惑星人な
んてみんな生理的欲求しかないようなノータリンなんですから、風邪な
んてひくわけないじゃないですか。本当に、アルベルさんもネルさんも×
×ですね。」

 ソフィアは表情を変えないままそう言った。そんなソフィアにアルベル
とネルは、”心配させて悪かった”とういうような、謝罪の言葉を言って
みた。

「ところで、他のみんなはどうしたんだい?マリアやロジャーやスフレや
……えっと…」

「フェイト?」

「そう、フェイト。あいつらは今どうしてるんだい?」

 ふと、みんなどうしてるんだろうと思ったネルは、二人に聞いてみた。

「あいつらならあそこだ。」

 と、アルベルが指差したのは、街の前にあるゴミ捨て場だった。そこ
をよく見てみると、マリアとフェイトとロジャーとスフレが氷りついて動か
なくなり、自然廃棄物のように捨てられていた。
 そんな仲間達を見たネルは、朝ごはんを橋の上にぶちまけ、”助け
ろよ!”と言ってアルベルを殴って、近所の民家からお湯を貰ってみん
なにかけた。


 10分後。氷りついていた4人は、無事に解凍され、命には別状が無
いようである。
 ネルは自分がぶちまけた朝ごはんを処理しながら、何故自分が手に
とうもろこしを持っているのか疑問に思った。


 二週間ぶりに、この7人は再会して集まった。






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全体的に見てどうでもいい話だからか、ちょっと手抜き…。
密かにアルソフィ好きです。