いつからだろう。僕は彼女に惹かれていた・・・


どこに惹かれたかと聞かれれば答えられない。


全てが今では愛しいのだから・・・


・・・でも


彼女が想いを寄せるのは僕じゃない。



彼女が12の時からずっと側にいて兄の様な人。


彼には僕が持ってないものをたくさん持っている。


僕は彼には勝てないだろう。


僕は諦めなきゃいけないのだろうか。



・・・マリア。



だけど・・・誰も望みはしない結果であったが、
     僕は彼女を手に入れる事が出来た。






第一話 終わりへの始まり








 この宇宙の創造主の手から離れ本当の「自由」を手にするための戦い。
あの長くつらい冒険からすでに1年半の月日が経とうとしていた。

 フェイトは再び大学へ通うようになった。
クォークが解散し元リーダーであるマリアも大学へ通うことになった。
マリアにとってもう大学では、何も学ぶことは無いのだが本人の普通の
人生を歩みたいという希望により姓を偽り通っている。
 もちろん彼女が、反銀河連邦組織の元リーダーでこの宇宙を救った
戦士たちの一人だということは誰も知らない。


 大学へ通うようになり冒険の時は見ることが出来なかった心からの
笑顔や表情を見ることが出来た。


あの日までは・・・


 あの日、大学は休みでフェイト、ソフィア、マリアの3人はマリアの自宅で
他愛ない会話をしながら休日を過ごしていた。
 そして、部屋に取り付けてある通信ディスプレイに突然の連絡が入った。



_______クリフ・フィッターの突然の死。
          死因は急性の病によるものだった。



 フェイトとソフィアは心臓をえぐられた様に心が締め付けられ、言葉を
発する事も無くそこで固まっていた。
 一人違ったのはマリア。

「そんなっ!嘘でしょ!クリフが死ぬわけ無いじゃない!!!」



 文字しか映しだされていないディスプレイに言い放つ。

「マリアさん!落ち着いてください!!」

 ソフィアはマリアに言うが、聞こえてはいないようであった。

「悪い冗談はよしてよ!いつもみたいに「冗談だ」って言ってよ!
お願いだから・・・・お願い・・・・」

 そのままマリアはガクッと膝を落とした。
こんなに取り乱し泣いているのを見るのは2人にとって初めてだった。



_______次の日からマリアは大学へは来なくなった。



 フェイトはマリアを心配し彼女の自宅まで足を運ばす。
ドアをノックしても返事は無く、勝手に入る事にする。
リビングに彼女の姿は無い。きっと自室に居るのだと思いフェイトは
部屋のドアをノックする。

「居るのかい?とりあえず入るよ。」

 ドアを開けるとベッドで力なく寝込んでいる彼女の姿があった。
そして、目元には涙の痕もはっきりと・・・

「・・・ちゃんと食事は摂ってるかい?しっかり栄養を摂らないと体に
悪いから・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 慰めの言葉さえ思いつかない自分に少し腹が立った。
フェイトはキッチンへ行き不慣れな手つきで食べやすい料理を作る。

「あまり美味しくはないかもしれないけど、しっかり食べるんだよ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 やはり返事は無い。
(僕には何もできないのかよ)
そのまま、フェイトは彼女の自宅を後にする。



そんな日が3日続いた。









そして4日目

「入るよマリア。」

 フェイトはいつもと同じように2回ノックしドアを開けた。
いつもと違ったのはベッドに彼女の姿が無いことだった。
(・・・いない?)
 フェイトの心の片隅に悪い予感がよぎる。
(まさか・・・)
 ただの予感だけならいいと、フェイトは家中を見回り彼女を探す。
そしてキッチンの隅でうずくまっている彼女の姿を発見した。

「おい!マリア!どうしたんだよ!」

 肩を掴むとマリアはフェイトの方に力なく崩れ落ちた。


右手には果物ナイフ。


左腕には流れる紅い血液。そして、つい最近つけたと思われる
無数の傷跡・・・


 この時、フェイトは確信した。
マリアの精神が崩壊していたことを・・・・



 幸い彼女の脈はまだあった。
 彼女は生きていた。







一週間後



 フェイトは学校が終わると同時にある場所へと足を向けた。
ある場所とは、<大都市総合病院-精神科病棟->

「こんにちわフェイト君。」

 40代半ばの看護婦がフェイトの姿を見つけ挨拶をする。

「こんにちわ。マリアの様子はどうですか?」

 フェイトも簡単な挨拶をし、目的の人物の様子を尋ねる。

「マリアちゃんだったら今眠ってるわよ。」

 そして彼は一室の病室を目指す。
<精神科病棟-816号室->

ここに彼女はいる。



 フェイトはそっとドアを開けベッドの方を見やる。
ベッドには病的な美しさをまとい小さな寝息をたて眠りについてる
マリアの姿があった。
 あの日、もう少し彼女を発見するのが遅れていたら今こうして
生きていることは出来なかったという。
 彼女は今、自分を表現する手段を失っている。
自分がどのような状況に置かれているのかはもう、自分で理解する
事は出来ない。
 生きている為の栄養摂取については、食べ物を口に入れても、
噛む事も、飲み込むことも出来ないので、胃に管を通し、直接栄養剤
を送り込んでいる。
 そして、意識がある時はただボーっと窓の外を見ているだけだという。




「綺麗だよ・・・。僕のマリア。」





 フェイトはそっと自分の唇をマリアの唇に重ねた。

____冷たく、残酷なくちづけ。



 運命という名の狂った歯車は静かに廻りだしていた・・・・










つづく


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