Punishment in…



「こんな時間にどうした?何か用でもあんのか?」

「…………」

 クリフはドアの傍に立つアルベルに話し掛けた。
夜も深まった時刻の、突然の訪問者。
その訪問者からの返事は、無い。

「立ってるだけじゃわかんねえだろ?何か言えよ。」

「…………」

 それでも、アルベルからの返事は無い。
沈黙が、数分間の時間を無意味に塗りつぶしていく。
そんな時間に、クリフは困り果てていたころ…。

「………チビと…喧嘩した。」

 小さな声で、アルベルが言葉を発した。
やっと、この空間に会話というものが生まれ出した。

「なるほどね。まぁ、そこにつっ立ってんのもなんだし、こっちにきて話してみろよ。」

 クリフがそう言うと、アルベルはクリフに言われるままクリフの隣へと腰を下ろし、全てを 話した。

 些細な意見の食い違いだった。
それが、男同士の闘争心に火をつけ、やがて喧嘩となった。

 わかっていた。悪いのは自分の方なんだと。
下らないプライドが、12歳のガキに負けたくないと。
そして、ロジャーをその拳で殴ってしまったこと。
24年目にして、初めて出来た親友と呼べる彼を傷つかせてしまったこと…。




「で、お前はどっちが悪いと思ってんだ?」

 クリフは、詳しい事情を聞きはせず、ただそれだけをアルベルに問う。
問い責める口調ではなく、優しい口調で。

「…………俺だ。…全部、俺が悪い…。」

 下を向いたまま、アルベルが答えた。
すると、クリフの腕が、アルベルの細い体を包み込んだ。

「お前には、罪を認める強さがある。そして、認めた。」

「……………」

 アルベルはクリフの腕の中で黙ったまま…。

 そんなことを言ってもらう為に…、ここへ来たのではない。
クリフなら…、罪を犯した自分を本気で叱り、必要なら、その大きな掌で自分を殴ってくれる と思ったから。
 自分は罪人なんだ。
罪人は罰を受けるもの。だから、彼なら自分に罰を与えてくれると思った。
それなのに、彼は……、

「悪いと思ったのなら謝ればいい。とりかえしのつかねえことじゃねえんだろ? アイツも"漢"だ。謝れば許してくれるはずだぜ。」

 クリフは…、その掌で自分を殴ることなく…、
罰を与える代わりに、その腕で、優しく抱きしめた。…罪人である自分を。

 温かい…。

罪人を待つものは、冷たい牢獄であるはずなのに……。
なのに…、何故、こんなにも……。

「うっ……うっ……ひっく………うえ〜ん」

 アルベルは、突然、声を上げて泣き出した。
彼の瞳から出る涙が、クリフの胸を濡らしていく。

 優しく自分を包み込む、クリフの腕が、罪の意識を浮上させていく。
どれだけ血を流すような肉体的な罰よりも、自分を優しく抱きしめるその腕が…、心に激痛を走らせた。

「謝るのは明日でも遅くねえよ。それまで、好きなだけ泣いていていいんだぜ。」

 泣いた。たくさん涙を流した。
その言葉も、優しく痛みを与える。

 今夜は、今夜だけはここに居させて欲しい。
クリフの腕の中という牢獄で、罰を受けていたい。





FIN





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