太陽の破片 U
〜FALL DOWN〜






「・・・と、いうわけじゃ。」

「なるほどな。つまり、3時のおやつには、あまり甘いものを与えるなと
いうわけか。」

「そういうわけじゃ。他に質問はあるか?」

「いや、だいたいわかった。」

「うむ。それじゃ、今日のセミナーはこれでおしまいじゃ。来週は『アルベル・
ノックス正しい褒め方』についてじゃ。」

 アーリグリフ城。ウォルターの部屋。
今日もまた、アルベルについての、一見、ものすごくくだらないセミナーにも
思えるが、かなり大事なセミナーが行われている。もう、終わったけど。
 時間は、午後の一時を回っていた。今日は、早く終わった。
ウォルターが、クリフ以外の皆から「クリフを早く帰せ!」と先日、集団リンチ
を受けていたからだ。

「ところでよ、ここで弁当を食ってもいいか?腹が減っちまってよ。」

「別に構わんが、昼食ならこちらで用意していたんじゃがの。」

「いや、俺にとっちゃ、料理人が仕事で作ったメシよりも、仲間の手作りの弁
当のほうが遥かに美味いんでな。」

「そうか、好きにせい。」

「ああ。そうさせてもらうぜ。」

 クリフはそう言って、21インチのテレビ1台分くらいの弁当箱を取り出し、
テーブルの上に”ドン”という音をさせて置く。そして、蓋を開ける。

「おお!こりゃ、美味そうだな。」

 そこからは、すんごく美味しそうな香りを漂わせ、湯気が上がっていた。
ネルの手作り弁当。彼女の料理の腕はかなりいいが、一級料理人の腕には
まだ及ばない。しかし、彼女のクリフへ対する『愛』が必要以上にうっとうしい
くらいに込められたこの弁当は、一級料理人が作ったモノを遥かに凌ぐほどの
完成度を誇っていた。更に、その冷めることの無い『愛』が保温機能の役割まで
果たしていた。

 クリフは21インチのテレビ1台分はあるような弁当を約15分で食べつくしてし
まった。その間、ウォルターは弁当を食べるクリフを羨ましそうに見ていたが、
弁当を食べることに一生懸命なクリフには、気づいてもらえなかった。

「ごっそさん。それじゃ、また一週間後な。」

「気をつけて帰りなされ。」










 弁当を食べ終え、ウォルターにおみやげを貰ったクリフは、城を後にして外
へ出ると、そこには、人、人、人で埋め尽くされていた。

「キャ〜!!クリフ様〜!!」
「サインくださ〜い!!」
「触らせて〜!!」
「抱いて〜!!!」
「俺を犯ってくれ〜!!!」

 クリフの非公式ファンクラブの会員達である。その数5000人。
この数字は、クレア非公式ファンクラブの3500人を上回る数字である。
戦争が終わった今、月のような癒しの光を放つクレアよりも、太陽のような活力
の光を放つクリフのほうが、支持率が高いのだ。
 普段、ネルやらマリアやらフェイトやらアルべルやらの障害物がクリフに目を
光らせているため、ファン達は近寄り難いが、こうして今、クリフが一人になって
いる時を見計らって、ファン達は一斉に寄ってくるのだ。

 で、クリフはファン想いのいいヤツなので、一人一人握手とサインをしてやって
いた。それが終わるころには、午後4時を回っていた。これでも、かなり早いペー
スである。

「ふう。早く帰んなきゃな。」

 クリフは自分の帰りを待つみんなの顔を思い浮かべ、走り出す。
ぺターニの宿の方へと。
 ちょうど、アーリグリフからカルサアへと続く道を通っていたときのことだった。

 その刹那。
 クリフの足に接地する感触が無かった。

「うお〜〜〜〜!!!!」

 そのまま、クリフの体が落下していく。
そこには、何故か穴が開いていた。直径5mくらいで深さが333m。
この333mは、トウキョウタワーと同じ高さである。

 このとき、クリフは遭難した。



















 時間を戻して、クリフが弁当を食べようとするころ。
ぺターニ。クリフの帰りを待つメンバー達。

 フェイトとロジャーはファクトリーで開発を。
しかし、出来上がるものはというと、ガラクタばかり。
二人が思うことは。
(クリフが居れば気合が入るのに・・・)

 スフレとネルはおままごとを。
しかし、設定は反抗期の娘(スフレ)と、娘に暴力を受ける母(ネル)というもの。
二人が思うことは。
(クリフ(父)が居てくれれば・・・)

 ソフィアとアルベルは食べ歩きに。
しかし、大好きな甘いものを食べていても何故だか暗い。
二人が思うことは。
(クリフが居ない・・・)

 マリアは原稿の仕上げに。
しかし、納得のいくものに仕上がらない。
彼女が思うことは。
(クリフが居ないから・・・)

 何をしても楽しくないから、みんな宿の一室に集まる。



つづく Vへ






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