太陽の破片 W
〜Without you〜




これまでのあんたといた時間が すべては過去になる

もう戻れないんだね  忘れることの無い過去

瓦礫の様に積み重なった想い出を大切にして

ずっと、あんたを待っている

不可能だとわかっていても・・・

もしも、生まれ変わって、何年、何十年、何百年、何千年も後に

またあんたと出会えるそのときまで、ずっと待ち続けるよ・・・

さよなら・・・・・・・みんな
さよなら・・・・・・・・自分










































「ちょっとやめてくださいネルさん!!まだ、クリフさんが死んだって決まった
訳じゃないんですよ!!」

 胸に短刀を突き立て、自殺を図ろうとするネルを、杖で顔をバシバシ殴りな
がらソフィアが取り押さえる。

「離せ!あいつの居ないこの世なんて!!」

「落ちついて!!」

 マリアも銃でネルの頭を殴りながら、暴れるネルを取り押さえる。とりあえず、
顔の形が変形するくらいまで殴りつけると、静かになった。
 時刻は、午後11時を回っていた。
隣の部屋の宿泊客から”うるさい!!”と苦情が出たので、その人にトリカブト
を飲ませて、窓からその人を投げ捨てた。


10分後。


 すっかりと、顔の形を戻したネルの元に、ぴょこぴょことスフレが歩み寄って
きた。

「ねえ、ネルちゃん。」

「どうしたんだいスフレ?」

「もう死のうだなんて考えないでね。」

「あたしは、もう大丈夫だよ。心配かけてすまなかったね。」

「クリフちゃんは死んでなんていないよ。アタシには分かるもん。」

「スフレ・・・」

「だから、クリフちゃんが帰ってきたらまた、おままごとを一緒にしようね。ク
リフちゃんがパパで、ネルちゃんがママで、アタシが娘だよ〜。」

「ありがとう・・・。約束するよ。」

 ネルは涙を浮かべながら、小さな体のスフレを抱きしめた。
嬉しかった。親友と呼びたかった。こんなにいい子が、こんなにもちかくにい
たなんて・・・。ネルとスフレを中心にとても暖かい空気が広がっていた。

「それじゃ、私はどんな役なのかしら?」

「僕は、どんな役なんだい?」

 自分達もおままごとに混ざりたいらしい、青い髪の二人がスフレに問う。
そして、スフレは無邪気な顔で答える。

「えっと〜、マリアちゃんはクリフちゃんの愛人だよ〜。31歳のネルちゃん
よりも19歳のマリアちゃんのことが気になりだして〜、だんだん夫婦の間
に溝が出来始める設定なの〜。それで、フェイトちゃんは、クリフちゃんの
アブノーマルな愛人だよ〜。ネルちゃんとのノーマルなセックスをマンネリ
化させないための体だけの関係なの。だけど、フェイトちゃんはクリフちゃ
んにだんだん惹かれてって、障害になるネルちゃんに無言電話とかして、
精神的にダメージを与えていくんだよ。最後にはとうとう、精神の限界まで
達したネルちゃんが・・・・って、あれ〜?みんなどうしたの〜?」

 さっきまでの、あたたかな空気は一転して、凍っていた。
特に、まだピチピチの23歳だというのに、31歳といわれたネルは心に一
生消えることのない傷を負った。スフレは、何故みんな凍っているのか不
思議そうに見ていた。







1時間後。時刻は午前零時。

「・・・・おい。」

 壁にもたれながら、鳴ることの無い電話をずっと見つめていたアルベ
ルが、さっきからシャーペンの芯を出して入れ、出しては入れて落ち着き
の無いネルに呼びかけた。

「なんだい?」

 それでも、その動作を止めることなく、顔だけをアルベルに向け返事を
返す。

「デザートが無い。」

 アルベルがテーブルの方に視線を向け、言う。

「あ、ほんとだね。」

 ネルもテーブルの方へと視線を向け、うっかりデザートを作り忘れてい
たことを思い出した。

「デザートは得意だ。一応、お前も手伝え。」

 デザートを作るらしい。

「ああ。わかっ・・・・・」


バタン


 アルベルがデザートを作るのを手伝うため、ネルが席をたった瞬間。
突然、彼女の体がフラッと、床へ落ちていった。

「おい!どうした!!起きろ!」

 アルベルが床に倒れたネルの頬を殴るようにバシバシと叩き、彼女の
意識の確認をする。
けれど、ネルはピクリとも動かない。
意識が無いのを認識すると、脈の確認をする。
・・・脈はあるようだ。まだ生きている。

「脈はあるみて・・・・」


バタン


 次は、アルベルが顔を天井に向けるようにして、背中から倒れこんだ。
口からは泡を吹いている。

「アルベル!!」

 フェイトがアルベルに駆け寄ってみるが、やはり意識は無い。
ネルとアルベルは精神的にも、肉体的にも限界まできていた。
クリフの居ないこの15時間で、まるで、太陽に何十年も当たっていない様な
感じになっていた。
 今、この二人を支えるクリフという人物も、クレアという人物も近くには居な
かったから。
 もう、この二人はクリフかクレア無しでは、生きてはいけない人間になって
いたのだ。碧いうさぎのように。








 田舎惑星のこの二人は、宿のベッドの上で寝かされ、生命を維持するため
の管を体中に繋がれていた。
 それから、マリアは点滴の管の接続を確認すると、そっと呟いた。

「早く帰ってきて、クリフ・・・でないと、アルベルもネルも死んじゃう・・・」

 マリアも、自分ではあまり気づいてはおらず、この二人の様に症状には表れ
てはいないがかなり危険なところまできていた。そして、クリフの帰りを待ち
ながらひたすら彼の名を呼び続ける。
 アルベルとネルも、失った意識の遥か333bも奥底の意識の中で、必死に
クリフの姿を捜し求めながら、今にも死んでしまいそうな声で、精一杯彼の名を
呼び続けている。

「・・・・クリフ・・・」

「・・・・クリフちゃん・・・」

「・・・ク・・・・・・フ・・・・・」

「・・・・・・バカチン・・・・・」

「・・・・・・・・・ク・・・リ・・フ・・・」

「・・・・クリフさん・・・」

「・・・・・・・クリフ・・・・」
































祈った。
みんなの心を一つにして、
同じ人物を想いながら。





そして、奇跡が起きた。


真っ暗な、エリクールのこっちの大陸に。
真っ暗な、この夜空に。

突然。
太陽が昇り、地を照らし出した。








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