太陽の破片 FINAL
〜We love you forever〜





――――・・・ここは?・・・地獄?・・・ああ、そうか。あたし死んだんだっけ。

――――やっと起きたか。

――――!!!・・・アルベル。そうか、あんたも死んだんだ・・・。

――――どうやらそうらしいな。

――――あんたなんかといっしょに死にたくなかったんだけどね。

――――それは俺のセリフだ。

――――・・・・・・・最後にあいつの声聞きたかったな。

――――・・・・・・・俺はアイツに会いたかった。

――――!・・・・・・あたしは抱きしめたもらいたかった。

――――!!・・・・・・俺はキスしてもらいたかった。

――――!!!・・・・・・あたしは性行為がしたかったね。

――――!!!!・・・・・・俺はコスチュームプレイがしたかった。

――――!!!!!・・・・・・・あ、あたしは、え〜と、え、えすえむを・・・・。








10分後

――――もう、やめよう。きりがないよ。一応、あたしの勝ちだからね。

――――何の勝負だ!

――――・・・・・・・・・・・・・・

――――・・・・・・・・・・・・・・

――――・・・・・・・・・・・・・・感じる。

――――何をだ?

――――あんたは、何も感じないのかい?

――――・・・・・いや、今感じた。帰ってきたのか・・・アイツが。

――――ああ。間違えないよ。あいつが帰ってきたんだ。

――――だったら、いつまでもここにいるわけにはいかねえな。

――――ああ。


さあ、帰ろう。あいつのいる世界へ。





















「「クリフ!!!」」

「びっくりするじゃない!いきなり生き返ったりなんかして!!」

「クリフが帰ってきたんだよ!!」

「えっ!クリフが!?」

 ネルとアルベルは死装束を纏い、死化粧が施された格好のまま、どかどか
と宿を出て行った。それに続いて、マリア、スフレ、フェイト、ロジャー、ソフィア
も宿を後にした。
 外に出ると、この季節にしては珍しく暖かい風が吹いていた。その風は、生
生温かい風というわけではなく、春に吹くような心地よい風だった。

「どうしたってんだい?これは・・・?」

 ぺターニの中央に位置する広場に着くとそこには、もう真夜中だというのに
街の人全員が集まっていた。中には、ウェルチやギルドマスターやとなりのお
ばはんの姿もあった。みんな、何故か黄色のTシャツを着用しており、手には
ライブでバラードが演奏されるときによく振られる発光スティックを持っていた。
フェイトは”見てよ!まるで人がゴミのようだ!”と言っていた。
 その人ごみの中で、ネルやマリアやアルベルはクリフの姿を探す。どこを見
ても、人、人、人でクリフの姿は見つからなかった。が、

「・・・・・・・クリフ!!!!」

 ネルは見つけた。
ぺターニの南門。そこに、プラチナヘアーの大きな体をした、想いを寄せる大
切な人。生きる意味とマッチョな肉体美を教えてくれた人。今では無くては生
きていけない人。カエルしゃんをくれた人。・・・愛する人の姿がそこにあった。
 ネルは走り出す。
このときのネルの脚力は、最大出力296ps、最大トルク41.3kg-mという驚
異的な数字をはじき出した。















 そのころ、クリフ。

「ふう。やっと着いたぜ・・・。もう、こんな時間かよ。さすがにアイツらももう寝て
んだろうなあ。にしても疲れちまったぜ。さっさと風呂入って寝るか。・・・ん?何
であんなに人が集まってんだ?」

 クリフの目に入ったには、400b先の人ごみだった。さらに、

「げっ!何だ!?」

 その人ごみの中から自分の方へと向かってくる物体を発見し、驚いた。それ
もそのはず。自分の方へ、死装束。もとい、古典的な幽霊の格好をした何かが
ものすごいスピードで向かってくるのなら驚かないはずが無い。
 クリフは、少し落ち着いて目を凝らす。

「あれは・・・・・・・ネルか?」

 クリフとネルの距離が今までの時間を埋めるように少しづつ縮まっていく。
250b、150b、50b・・・・そして、0b。

 二人は再会した。

 ネルがクリフの胸へと飛び込んでいった。このとき、ネルの頭突きがクリフの
みぞおちに直撃したため、クリフは少量の血を吐いて、息苦しくなった。
かなり、痛そうだった。

「馬鹿。遅いじゃないかい・・・。どれだけ心配したと思ってんのさ。あたしは、一
回死んだんだよ。」

「ワリィ。心配かけちまったようだな・・・(一回死んだって?んな馬鹿な)」

 クリフはそう言ってネルを抱き返す。死化粧の匂いがクリフの鼻についてけむ
たがっていた。

「でも・・・あんたが無事でよかった。」

「そうか・・・(まあ、無事ってコトもねえけどな)」

 そして、いきなり何故か二人は唇を重ねあった。
それと同時に、このぺターニの街には、大量の季節外れのひまわりが、再会し
た二人を祝福するようにドッカドッカと狂い咲いた。
 さすがに、これに関しては”え、何で咲く?”と街の人、3人ほどがツッコんだ。
 そのひまわりは、小さいもので50cmほどで、大きいものでは50bもあるよう
なものまであった。そんな大量のひまわりによって街の大半の建造物は破壊さ
れ、ぺターニは半壊滅状態に陥った。

 教会の屋根の部分に取り付けられた巨大スクリーンには、キスを交わす二人
の姿が映し出され、街の人々は発光スティックを頭上に掲げ、左右に振り出し
た。そして、盛大なクリフコールが湧き上がった。











 唇を離したクリフは、視線を広場の方へと向けると、そこから他の仲間達が
こちらに向かって走ってくる。

「クリフーーーー!!」
「クリフちゃ〜〜〜ん!!」
「クソ虫〜〜〜!!」
「クリフぅーーーー!!」
「クリフさーーーん!!」
「バカチーーーン!!」

「おう!おめぇら!!」

 皆がクリフに近づくと、クリフにくっ付いていたネルを誰かが引き離して、皆
がクリフに抱きついた。引き離されたネルも、自分が抱きつくスペースを探して
再びクリフに抱きついた。

「クリフ・・・お前が居ないと僕は・・・」
「帰ってきてありがとうクリフ・・・」

 皆、瞳に涙を浮かべている。だけど、その顔は誰もが幸せそうだった。
クリフは、7人に抱きつかれて、とても苦しそうだった。
 そして、正面に居たフェイトがクリフの唇を奪う。
 それを見たマリアはフェイトを殴り倒してクリフの唇を奪う。
 さらに、それを見た皆がクリフの唇の奪い合いを始めだした。

「もうこれじゃキリがないよ。クリフを脱がそう!!」

 フェイトがそう言った。

「うん!」
「そうね。」

 それに続いて、皆も言った。クリフは”合意すんな!!”と言おうとしたが
声を出すことが何故か出来なくて、そのまま上着を皆にむしり取られてし
まった。そこから7人による千のキス嵐が始まった。クリフはその鳥肌が
立つような気持ち悪い感触に必死に耐えた。

「宿へ帰ろうぜバカチン!!」

「クリフちゃん帰ろ〜!!」

 千のキス嵐が終了すると、ロジャーとスフレはそう言って、地面に寝転ぶ
精神力の果てたクリフの両足を掴んで、宿まで500b程引きずっていった。
上半身裸にされたクリフは、ざらついた地面に背中が擦れて、悲鳴を上げ
ながら引きずられていった。すごく痛そうだった。















 ぺターニの宿。

 ロジャーとスフレに引きずられてきたクリフは部屋の前に捨てられ、皆は
部屋に入ってドアに鍵を掛けた。

「おい!!何のまねだ!」

 クリフは上着を着なおして、ドアをバンバン叩く。ドアは鍵がかかっていて
開くわけが無い。クリフの頭に?マークが20個と怒りマークが57個くらい
溜まった3分後にガチャリと鍵が開く音がした。
 クリフはドアノブを回し、中へ入ると、

「「「「「「「おかえりなさい!クリフ〜!!」」」」」」」

 皆が並んで声を揃えてクリフを迎えた。クリフは一瞬キョトンとしたが、す
ぐに冷静さを取り戻して、微笑んだ。

「ああ。ただいま。遅くなっちまってすまねえな。」

 クリフがそう言うと、マリアがクリフに歩み寄ってきて両手を差し出す。どう
やら、帰宅した夫から上着を預かる新妻というのをやってみたいようだ。ク
リフもそれを分かっているのか、着なおした上着を仕方なくまた脱いでマリア
に預けた。そして、クリフはテーブルに目を向けた。

「おっ!メシを作っておいてくれたのか!!」

 上着をマリアに返してもらって着なおしたクリフの視界には、テーブルに並べ
られた料理が入ってくると、空腹感が湧き上がった。さすがに、何時間も食事
を取っていなかったので、それはおなかが空くであろう。

「さっそくメシにしようぜ!」

「あ、そうだわ。あなたにプレゼントを用意していたんだけどね。」

 早くメシにありつきたいクリフをそのままにして、マリアは嬉しそうにプレゼン
トが入っているであろう袋をクリフに手渡す。

「何だ何だ?今開けてもいいか?」

「ええ、どうぞ。」

 袋を開けると、そこからはクリフピッタリサイズのセーターが出てきた。その
セーターの編み方はこの世の物とは思えないほど醜く、真ん中に入っている
模様はクマらしいが、どうみてもナメクジにしか見えない。クマだと認識させる
ために、そのナメクジの下には「↑クマ」という文字が入っていた。

「ちょっと、変なのになっちゃったけど・・・・」

「いや。サンキュー。大事にすっからよ。」

 クリフには、どんなにセーターがやつれていようが、どんなに恥ずかしい模
様が入っていようが、それを自分のために一生懸命編んでくれたその気持ち
が、なによりも嬉しかった。

「そういや、俺もウォルターにみやげを貰ったんだが、忘れてきちまったようだ。
ついでにリュックも。」

「いいえ。ウォルターのハゲに貰ったおみやげなんかよりも、あなたが帰って
きたことがお土産よ。」

 マリアはそう言ってクリフに抱きついた。すると、他のメンバーも化学反応の
ようにクリフに抱きついた。いつものように、クリフはウザそうにしていた。

「あ、そういえばお風呂も沸いてるわよ。」

「おっ、そうか。だが、その前にメシ・・・」

「よし!みんなでクリフと一緒にお風呂に入ろう!!」

 本当に早くメシにありつきたいクリフの言葉を、フェイトはあっさりと無視して、
皆でクリフを風呂まで引っ張っていった。







 脱衣所に着くと、嫌がるクリフの服をみんなで脱がしていく。もしも、これが漫
画だったのなら、クリフの大事な部分はスフレの頭で隠れて見えなかったこと
だろう。クリフは自分だけが全裸で、他の皆が、水着をそれぞれ着用していた
ことに対して、なんとなくムカついた。

ザプーン

 このクソ狭い風呂に8人が入るのはさすがに狭かった。クリフはこの狭さに
我慢の限界を感じたからか、それとも、体を洗おうとしたのか風呂桶から出た。

「背中ならあたしが流すよ。」
「それは俺がやる。」
「いいえ、私がやるわ。」
「悪いけど、僕がやらせてもらうよ。」

 また下らない争いが始まりそうだったが、今回は公平にジャンケンで決めた。
マリアが勝った。嬉しそうにしていた。

「昔はよくあなたの背中を流したわよね。」

「ああ、そうだったな。(お前が無理矢理な)」

 そんな会話を交えながら、マリアはクリフの背中をゴシゴシと洗い出す。それを
見た他のメンバーは、

「それじゃ、僕はクリフの××を洗うよ。」
「何!!テメェ、一人だけいいとこをとるんじゃねえ!!」
「・・・・そ、そこだけは譲るわけにはいかないね!」

 3人は下らない争いを始めた。それを見たソフィアは、

「フェイトもアルベルさんもネルさんも、争わないで下さい!それなら、みんなで
一緒に洗えばいいじゃないですか!!私も洗いますから。」

「おい!そういう問題じゃねえよ嬢ちゃん!!」
































 そして、就寝の時間になった。結局、クリフはメシにありつけなかった。
クリフはすごく疲れていたので早く眠ろうとした。すると、クリフの部屋に皆が
それぞれ布団やらベッドやら持ち込んできて、”みんなでクリフと一緒に寝よう”
と押しかけてきた。そして、そのまま、ベッドをくっ付けて、皆それぞれクリフの
体の一部分を掴むと、すぐに寝息を立てて寝入ってしまった。クリフも寝た。






 一時間後、クリフは暑苦しさを覚えて目を覚ました。
自分の体のどこかを掴んでいる仲間たちを、そっと引き離そうとしたが、安ら
かに幸せそうな寝顔を見ていると、そんな気も失せ、しばらくそのままにしてお
いてやろうと思った。


 その幸せそうな寝顔の下で、皆は夢を見ていた。
大好きなクリフと、ずっとずっと一緒に居る夢。

ありえない夢。




 クリフは、この戦いが終われば、宇宙の壊れたシステムを新しく作り直すとい
う、新しい戦いへと向かわねばならないのだ。だから、ずっとこの仲間達と一緒
に居るわけにはいかない。クリフの立場と責任感がそれを許しはしないから。

 エリクールのネルやアルベルやロジャーとは、いつ会えるかわからない。
フェイトやマリアやソフィアには、戦いが終わってからのゴタゴタが落ち着くまで
暫くその身を隠してもらおうと思っているため、いつ会えるかわからない。
スフレは劇団があるためフツーに無理だろう。
 だから、戦いが終わればクリフと一緒に居られる時間が、今までに比べて極
端に少なくなってしまうのだ。

 もしかすると皆、この戦いが終わったらクリフがどんな道へ進むか分かってい
るからこそ、彼と一緒に居られるこの時間を、誰よりも彼の近くに居たいと願っ
て、必要以上にしがみついてくるのかもしれない。
 真実がどうなのかは、クリフには分からないが。


 皆、夢を見ている。
夢はきっと、戦いが終わるまでのこの時間なのかもしれない。
本来ならば、アルベルやネルやロジャーには出会わなかったのだから。
そして、夢が終われば、クリフは遥か遠くへと帰っていってしまう。
 クリフも、この大切で愛くるしい仲間達とは離れたくはないのだ。
だからせめて、時間が許す、最後の一瞬まで・・・・・・・。











「・・・お前らはそれぞれの場所で、俺は宇宙で暮らす。・・・共に生きようぜ。」

 誰の聴覚に伝わることも無く、クリフは呟いた。

「・・・・・・クリフ・・・ずっと一緒よ・・・スピースピー。
「・・・どこにも行くなクソ虫〜・・・・うにゃ〜うにゃー。パチン(←鼻ちょうちん)」
「・・・クリフ・・・ずっと僕と居ような・・・すピーすピー・・ギリギリ(歯軋り)
「・・・クリフさん・・・側にいてください・・・スぴースぴー。へっぷし!(くしゃみ)
「・・・バカチン・・・ずっとオイラの子分で・・・ズガ〜スピー。
「・・・クリフちゃん・・・ずっと一緒に居ようね・・・スースー。
「・・・クリフ・・・ずっと、あたしの側にいておくれよ・・・すぴーすぴ〜。

「・・・・・・・・・・・・・ああ。心配すんな・・・任せとけって・・・」

 何年ぶりか・・・クリフの頬に雫が零れ落ちた。


 朝日が昇った。
地上の太陽と、その仲間達を、やさしく照らし出した。





おしまい

戻る

あとがき
やっと終わったよ〜!
『Love Around』のリメイク版のつもりで書きました〜!!
最後は、もっと賑やかな終わり方をする予定が、寂しい終わり方になってしまいました。
ちなみに、愛されクリフシリーズのクリフと仲間達のイメージは、
親鳥とアンポンタンな小鳥達というイメージです。(イヤなイメージだね)
ここまでお付き合いくださった方々、ありがとうございました!!