約束された…、現在。







 木製のベッドが、今にも壊れそうなほどにギシギシと頼りない音を立てる。
 相手の持つ体温と、漏らす声と、体に走る快楽と、その心を求めて激しく
腰を動かす、筋肉質のたくましい体を持った、金色の髪の男性。
 体を貫く、痛み混じりの快楽に、心満たされながら、吐息を漏らし、喘ぐ声
を殺め続ける、男と正反対なすらりとした体を持った、紅の髪の女性。
 窓から入る月明かりだけの部屋で行われる、激しい情交。

 暗闇が支配し、静まり返ったシランド城の一室で繰り広げられる、溶けそ
うな程に熱く、妖艶な光景。

 時間が進むにつれて、二人の体が加熱していくと同時に、二人の心もそ
れ以上に熱を上げていく。
 男が女の頭と背に腕を回し、首筋に吸い付くように唇を当て、舌を立てて
舐めまわし、更に激しく腰を動かす。
 女のほうも、男の背に両腕を回し、受ける痛みと快楽の激しさに、殺め続
けてきた喘ぐ声を殺め続けることが出来なくなり、次々と声を零して行く。

 そして、頂へと二人は昇りつめる。

 男が暴走する欲望を女から引き抜き、女の下腹部へと白く濁った液体を
放つ。荒々しく吐息を漏らす女を男が、大きな腕で優しく抱きしめ、そっと口
付けを交わし、名を呼ぶ。

「ネル……。」

 男が唇を離し名を呼ぶと、吐息混じりに女が名を呼び返す。

「……クリフ。」

















☆ ★ ★ ★ ☆



 一度目の情交が終わりを迎えてから、どれくらいの時間が経過したのだ
ろう。
 部屋はすっかりと静かになり、熱を残したままの体が、シングルベッドの
上に二つ横たわっている。

「……あんたが入ると、このベッドが凄く狭いんだけどさ。」

 シーツに包まったままのネルが、頬杖をついて自分を見下ろすクリフを
見て、情交の後の、照れくささを誤魔化すために不機嫌そうな口調と表情
で言う。

「だったら、ダブルベッドにでもすりゃいいじゃねえか。」

 平然と楽しそうに、クリフが言葉を返す。

「バカ……。あたしがいきなりダブルベッドになんてしたら、周りから変な目
で見られるだろ?」

「確かにな。」

 楽しそうに言うクリフに対して、目を細めて呆れたように言うネル。
クリフとしては、冗談のつもりで言ったのだったが。

「だいたい、いつもここでこんなことをするわけじゃないだろ。あんたは、何
処であろうが、夜となればいつも……。」

 ネルのその言葉に、クリフは今までの夜の彼女に対する行動を、思い出
してみた。

「まぁ…、認めるがな。一応言っておくが、お前以外の女を抱きたいとは思
わねえし、オレが抱きたいと思う女は、お前だけだ。」

 さっきまでの、ニヤけた顔から一転して、真剣な顔つきに変わったクリフ
のその言葉に、ネルは心を返され、顔を赤らめる。

「…………バカ。」

 照れを誤魔化しきれないネルは、熱くなった顔をクリフに見せないため
に、顔をそむけ、くるりと背を向ける。

「お前、バカバカってなぁ。アルベルのヤツには”阿呆”と呼ばれて、お前
には”バカ”って呼ばれんのかよ。」

 面白くなさそうに、顔をしかめて、そう言うクリフ。

「そういえば……、あんたを”バカチン”て呼ぶやつもいなかったっけ?」



……

………

…………

「……………ああ。いたな、そういうやつ。」

 クリフとネルは同じ人物を思い浮かべる。
ダグラスの森で会った、少々生意気な、亜人の少年。
 更にネルは、クリフとその少年のやりとりを思い浮かべる。
自分の身長の半分にも満たない少年と、大の大人でるクリフが本気に
なって、少年の子供レベルの口喧嘩に相手をしている姿を。






「……やっぱり、あんたはバカだね。」
「あ〜あ。ホント、お前はキッツイよな〜。」

 ガクンと頭を落として、クリフが言う。

「ああ、それからさ……。」
「どうした?」
「あたしは…、本当は、こういうことは……好きじゃないんだけどさ、
あんたにだけなら………、抱かれても、構わないよ。」
「ずいぶんと今日は、素直じゃねぇか。」

 ネルの口から発せられた、クリフにとっては以外すぎるほど以外だった
その言葉に驚いた。

「悪かったね!!いつもは素直じゃなくてさ。」

 さっきの、つい口から出てしまった言葉に後悔したネル。

「いや、そんなことはねえよ。」

 そう言って、クリフは上半身をベッドから起こす。
ネルはクリフのその行動に、何かイヤな予感がよぎる。
体を硬くして、警戒を強める。

「それじゃ、遠慮はしねえぜ。」

「え?」








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