イヤな予感ほどよく当たる。
ネルの警戒も虚しく、クリフに両腕を掴まれ、ガバっと胸を広げられ、ベ
ッドへと押さえつけられる。その上から、クリフはネルの顔を覗き込むよ
うに見下ろす。

「オレには、どれだけでも抱かれたって構わないんだろ?」

「”どれだけ”とは言ってないじゃないか!」

 そう言い返してみたものの、その言葉はクリフを素通りしていき、クリ
フはネルの首筋へと舌を立てる。
 甘い刺激が、首筋に走っていく。

「オレは…、もう止まんねえぜ。」

 そう言ってネルの首筋から唇を離し、再び彼女の目を直視する。

 見詰め合う二人の瞳に、その未来に、互いの姿がうつることは無くて
も、今は…。
 今だけは、全てを曝け出した互いの姿を、ただそれだけを捉えて、瞳
の奥へ映し出している。

「……わかってる…よ……。」

 ベッドへ押し付けていた腕を離し、掌を重ね、握り合う。













 そして、再び交わされる口付け。
二度目の、情交が始まりだす合図。


 男女の罪が、更に重く、深くなっていく。


 二人は、お互いにわかっている。
熱く、強く、激しく絡み合う愛情が、別れいく未来がある自分達にとって、
どれほど、傷つけあうかを。
それでも、止める事は出来ず、…誰にも、止められはしない。


 何度も、何度も、何度も唇を当てて、寄せて、飢えた獣のように何度も。
舌を口内で触れ合わせ、絡み合わせる。





 握り合わせていた掌をゆっくりと離して、重ねていた唇もゆっくりと離す。
それから、クリフはネルの体を横にして、その細い背中に密着し、左手の
中指で彼女の入り口と蕾の間を軽く弄り、右手は彼女の頭と枕の間を通り
て、胸の膨らみを優しく揉みながら、指でその先端を弄ぶ。

「今日は、特別な夜なんだぜ。」
「は?」

 耳元で囁く、クリフの言葉の意味が分からない。
秘部の入り口付近を、そっと中へと進入させ、内部から撫でる。

「結婚式の日の夜にゃ、と〜ぜん初夜があるだろ。」
「じゃぁ……っ……、”初夜ごっこ”とで…も…言うの…っ…かい…?」

 性感帯に走る、甘い刺激に耐え、楽しそうに言うクリフの表情を想像しな
がら、なんとかまともに言葉として成り立つ声を出す。自分が受ける身であ
ることを、少し恨みながら。

「ま、そういうこった。」
「バカ……。」

 わかっている。
どんなに望んでも、最後には手にすることが出来ないのに、それでも、欲し
いと、狂ってしまっている自分がどれくらいバカなのかを。

「”バカ”で、結構だ……。」






 内部から撫でる力を強め、更に薬指を加えて、親指で膨れ上がった蕾を
押さえつけ擦る。入れた二本の指を、慣れた手つきでかき回す。
 内部の壁から、にじみ出てくるものを感じる。
わざと、音を立ててみる。
 この狭い空間に小さく響き渡る、自身から聞こえてくるその卑猥な音に、
快楽と比例するように羞恥心が、ネルの中に湧き上がってくる。



 羞恥心に満ちたその顔を見ようと、クリフはネルを仰向けにして、その顔
を覗き見る。まるで、天使が悶える姿を、芸術品として観賞する悪魔のよう
な冷酷な表情で。
 いつもの強気な彼女の顔とは、まるで正反対なその顔に、クリフは更に情
欲の炎を大きく燃やしていく。



 動かす指を、絡みついた液体を滴らせながら引き離す。
ひとときだけの、平穏を彼女に与えてやる。
本当に……、”ひととき”だけの。


 クリフはネルの脚を開いて、曝け出されたその中心部へと、欲望で膨れ
上がり、硬くなったそれを入れて……貫いた。


「あっ…。」


 女性特有の高い声が、吐息と吐息の間で鳴る。
再びネルの両腕をベッドに押し付けて、クリフは腰を動かす。

 体を突き抜けていくその刺激に悶えながら、時折彼女の口から喘ぐ声が
零れ出ていく。
 その声が、どれほどクリフを奮い立たせるのかを、彼女はまだ知らない。
その声を聞こうと、彼は腰を動かす強さを更に、強めていく。

 快楽と、肉欲がクリフを支配する。
いや、それだけではない。
それに混じって、暖かい感情がある。
いつからか、女性と体を共有するときに、クリフの中で欠けてしまった何か。
 今は…、それがある。
 過去の、数え切れないくらいの女達との、熱く交わりあったどの夜も、無機
質だったと思えてしまうくらいの、何か。





 吐息を漏らすネルの口が、クリフの唇で覆われる。
繋がったまま、彼は彼女の背に腕を回して、上半身を起こし、自分の胸へと
抱き寄せる。

 手に入れることの出来ない、重さ。
物質的な重さでは、鍛えたクリフにとっては、軽々しい重さなのに、何故か、
鉄で作られた像のように重く感じる。
腕からすり抜けて、消えてしまわないように、強く抱きしめる。


 ネルがクリフの首へと腕を回して、後ろ髪を掴む。
二つの顔が、交差する。
吐息が耳にかかり、耳元で甘い声が囁かれられる。
 それから、彼女自ら深い快楽を求めて腰を動かし始め、クリフの唇を奪い
だす。
 唇と唇。肌と肌。そして、心と心。すべてが今、重なり合って一つになってい
る。









 ネルの上半身をもう一度ベッドへと押し倒して、ありったけの力で貫き、突
き入れる。制御不能になった欲望が暴走して止まらない。
 突き上げてくる刺激に、堪えきれなくなり、激しく乱れ喘ぐ声を上げる。

 一度目の情交のレベルを、超えていく。

 彼女を壊したくない。傷つけたくない。という、クリフが生み出した偽善的な
心の裏で、本心が暴れ始める。

 もっと、もっと、犯してしまいたい。
自分だけを欲して、乱れ狂わせて、たとえ”イヤだ”と泣いて許しを媚びても、
それを無視して、滅茶苦茶にしてやりたい。
 自分が彼女の前から去り、彼女が自分のことを忘れてしまった後の、未来。
その時に、彼女が誰か他のヤツのものになってしまったとき。
そいつと、体を交わり合わせることが出来ないように、壊してしまいたい。
 そして、今このときに、彼女の中で決して消すことが出来ないくらいに、自分
を刻み付けておきたい……。







 オレは…、なんて無力なんだ。
今まで、どんな女も手に入れてきたオレが、今までで一番惚れた女を、手に入
れることが出来ねぇなんて。






「ネル…、誰にも渡さねえ……。」

 消えて無くなってしまいそうな、ほんの僅かな理性でそう言う。
喘ぎで、言葉を発することの出来ないネルは、言葉の代わりに、クリフの太い
腕を力いっぱい掴み返す。



 全てを、何もかもを奪って欲しいと願う『女性』としてのネル。
けれど、国に仕える『兵士』としてのネルが、未来までは奪わせようとはしない。



 そして、情欲と悲しみが渦巻いた狂気の中で、頂に達した。
液体と化した欲望を、露になったネルの中心部へと放った。












 熱のある体を優しく抱きしめて、吐息の残る唇に唇を当てる。
一度だけキスをして、クリフはネルの髪を、子供の頭を撫でるようにそっと
撫でた。


 どんなに、約束の無い「未来」が二人を待っていても、今だけは、この狭
い部屋の中で、互いに一番近い場所で、互いの温かを感じて、共に全てを
共有することが出来る。
 今だけは、誰にも邪魔されずに、約束された「現在」がある。
もしも、これが夢なのなら、この夢に泳ぎ疲れても、この夢の底でずっと溺
れていたい…。


 だけど、体を優しく抱きしめる腕には、永遠は無くて。
この部屋に、永遠は無い。
あるのは、二つの体と、無情に時間を刻んでいく時計だけ。





おわり
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あとがき
とくに続きとして持ってくる意味はあったのかな〜という思いが(汗)
前回のリクエスト小説はまったり幸せ風味でしたので、今回はちょっと切ない系エロでいって
みました〜。それでもって、クリネルな、可愛いところや、激しいところや、エロや、切ないとこ
ろなど、何でもかんでも詰め込んでみました〜^^そして、ワケのわからないものに…。
最初は、ノート5ページくらいの予定が、10ページに…。わ〜
最後には、ハッピーエンドですので。(←しつこい)
彦星と織姫みたいな感じですが。

何はともあれリクエストありがとうございました〜!
希望にそえられなかったらすいません…(結構脱線してるし)
そして、勝手に裏仕様にしてすいません。